犬や猫と暮らしていると、留守番の日でもエアコンを止められません。人だけの家なら消して出かけられる時間帯に、うちだけは回り続けている。その分の電気代をどうにかしたいと思って電力会社を探していると、「ペット割」を掲げる新電力に行き当たります。

リボンエナジーの割引メニューがそれです。ペットと暮らしていることを申し込めば、電気料金が毎月引かれます。

ではその割引は、うちの電気代にいくら効くのか。この記事は、同社が公開している約款と付帯メニュー定義書、それに日本卸電力取引所の取引実績から、その金額を出しました。結論を先に書くと、ペット割で引かれるのは月100円台から400円台です。そして、この会社の料金は市場価格に連動して動くため、損得を決めているのは割引の数ではなく、その市場価格のほうです。

(記載の内容は2026年8月26日に各公式資料で確認したものです。当社はリボンエナジーと提携しておらず、この記事に紹介料の発生するリンクはありません。)

ペット割の中身は0.55円/kWh、全国どこでも同じ

割引の条件は、同社が公開している付帯メニュー定義書「ペット割引」(2024年8月1日実施)に書かれています。この定義書はPDFで誰でも読めます。

項目定義書の記載
割引単価使用電力量1kWhにつき0.50円(税込0.55円)
対象エリア北海道・東北・東京・中部・北陸・関西・中国・四国・九州の9エリアすべて同額
割引額の計算その1か月の使用電力量に割引単価を適用。1円未満は切り捨て
適用条件所定の方法で申し込むこと/同社が申し込みを承諾すること/同社の電気料金メニューが適用されること
適用開始承諾後に到来する計量日または検針日から
適用の廃止条件を満たさないことが判明した時点
不正な申し込み適用期間に反映した割引額の全額を違約金として請求

エリアによって金額が変わらないのが、この割引の特徴です。後で見るように電気料金の本体は住んでいるエリアで大きく違うのですが、割引だけは全国一律で0.55円/kWhです。

自動では付きません。同社のペット割引の案内ページによると、電気の申し込みを済ませたあと、マイページからペット割引を申し込み、同社の審査を経てメールで結果が知らされる流れです。ペットがいれば勝手に安くなる仕組みではありません。

実際にいくら引かれるか

割引単価に月の使用電力量を掛ければ出ます。検針票か電力会社のマイページに載っている使用量(kWh)を、次の表に当てはめてください。定義書上の計算は税抜0.50円/kWhを基礎に1円未満を切り捨てるため、税込の金額は換算値です。

月の使用電力量ペット割の割引額(月・税込)年間
250kWh約138円約1,650円
350kWh約193円約2,310円
450kWh約248円約2,970円
600kWh330円3,960円
800kWh440円5,280円

ペットのためにエアコンを長く回す家は、そうでない家より使用量が多くなります。その分だけ割引額も増える計算です。ただし増え方は緩やかで、使用量が倍になっても割引額は倍の数百円にしかなりません。

年間で見ると、ペット割1つで浮くのは1,600円から5,300円ほどです。よくある月350〜450kWhの範囲なら2,300〜3,000円で、ペットフードひと袋ぶんと考えると規模の感覚がつかめると思います。

ペット割は「ペット向けの優遇」ではない

同社は7種類の割引を用意していて、ペット割はそのうちの1つです。7つすべての定義書を確認したところ、単価は次のようになっていました。

割引対象割引単価(税込・1kWhあたり)
マイホーム割引持ち家に住んでいる0.55円
ペット割引ペットと暮らしている0.55円
オール電化割引オール電化住宅0.55円
太陽光割引太陽光発電設備がある0.55円
蓄電池割引家庭用蓄電池がある0.55円
EV割引電気自動車がある0.55円
ファミリー割引世帯人数1人0.11円/2人0.22円/3人0.33円/4人0.44円/5人以上0.55円

ペット割の0.55円は、持ち家であることやオール電化であることと同じ扱いです。ペットを飼っているから特別に手厚い、という設計ではありません。

裏を返すと、当てはまる項目が多い家ほど単価が下がります。持ち家で5人以上世帯でペットがいてオール電化なら、それだけで2.2円/kWhです。7つすべてに当てはまれば3.85円/kWhになります。ペット割だけを目当てに乗り換えるより、いくつ当てはまるかで考えるほうが実態に合っています。

ファミリー割引だけは世帯人数で段階が変わります。一人暮らしで犬や猫と暮らしている場合、ファミリー割引は0.11円にしかならないため、割引の合計は伸びにくくなります。

対象になる動物と、審査があること

犬と猫だけだと思われがちですが、同社のペット割引の案内ページには次の動物が挙げられています。

犬/猫/うさぎ/ハムスター/フェレット/熱帯魚/インコ

小動物や鳥、熱帯魚まで入っているのが、この割引の特徴的なところです。ペットと暮らす家庭を広めに取る設計になっています。

条件は「電気使用場所でペットと暮らす場合」と書かれています。実家で飼っている、という状態では対象になりません。

そして同じページには「※割引適用には所定の審査があります」と書かれています。付帯メニュー定義書の適用条件にある「当社が本メニューの申し込みを承諾すること」が、この審査にあたります。申し込めば必ず通るものではありません。

上に挙がっていない動物、たとえば爬虫類や大型の鳥と暮らしている場合は、申し込む前に問い合わせ窓口で聞いておくのが確実です。特定商取引法に基づく表記によると、電話番号は050-1721-4564、受付は平日10:00〜17:00です。

多頭飼いでも割引額は変わりません。定義書の割引単価は頭数と無関係に0.55円/kWhなので、3頭いても1頭ぶんです。ただし多頭飼いの家は電気の使用量そのものが多くなりがちなので、結果として引かれる額は増えます。

提出書類は決まっていない。だからこそ、偽ると重い

審査があるとはいえ、ペットを飼っている証明として何を出すのかは、定義書にも案内ページにも書かれていません。マイページから申し込んで、結果がメールで届く流れだけが示されています。

そのぶん、偽って申し込んだときの扱いが厳しく決められています。定義書7(2)にこうあります。

当社は、お客さまの不正な申し込みが判明し、本メニューの適用を廃止する場合には、適用期間に反映した割引額の全額を違約金として申し受けます。

月200円程度の割引でも、2年続けば5,000円近くになります。それを一度にまとめて請求される条項です。ペットがいないのに申し込む理由は、どう考えても割に合いません。

同じ趣旨の条項は、7つの割引の定義書すべてに入っていました。蓄電池割引の定義書では「虚偽申告等を含む不正な申し込みにより適用された割引額に関しては、本メニューの適用期間内に発生した割引額全額を違約金としてお客さまに請求いたします」と、より直接的に書かれています。持ち家でないのにマイホーム割引を、実際より多い人数でファミリー割引を申し込む場合も同じ扱いです。

料金の本体は、市場価格に連動している

ここからが、割引よりずっと金額を左右する部分です。

同社の料金メニューは「リボングリーン」の1つだけで、電気料金メニュー定義書によると、電気料金は次の3つでできています。

  • 固定従量料金(使用電力量 × エリアごとに決まった単価)
  • 変動従量料金(30分ごとの使用電力量 × その30分の市場価格)
  • 再生可能エネルギー発電促進賦課金(2026年5月分〜2027年4月分は1kWhあたり4.18円)

基本料金の項目がありません。燃料費調整額の項目もありません。広告で「基本料金&燃料費調整額0円」と書かれているのは、この構造のことです。

その代わりに入っているのが変動従量料金です。日本卸電力取引所(JEPX)が公表する30分ごとの市場価格(エリアプライス)が、そのまま使用量に掛けられます。燃料費が上がったときに料金へ反映される場所が、燃料費調整額から市場価格に移ったと考えると分かりやすいと思います。

固定側の単価は住んでいるエリアで決まっています。

エリア固定従量料金単価(税込・1kWhあたり)
北海道24.20円
東北・東京・中部・北陸・中国・四国22.00円
関西・九州19.80円

自分が1kWhあたり実際にいくら払うことになるかは、この固定単価に市場価格を足して計算します。市場価格は税抜で公表されるので、消費税を加えて足します。

実効単価(税込) = 固定従量料金単価 + 市場価格 × 1.1

東京エリアの固定単価は22.00円です。JEPXの東京エリアプライスの2025年度平均は12.45円だったので、平均的な使い方なら 22.00 + 12.45 × 1.1 = 35.70円/kWh が目安になります。ペット割を使うと35.15円です。

いま契約している会社の検針票を見て、請求額を使用量で割ると1kWhあたりの単価が出ます。その数字とこの35円前後を比べるのが、いちばん確実な比較です。

「年間27,000円おトク」は、何と比べた数字か

広告で見かける金額には、必ず比較の前提があります。同社の広告ページには試算条件が明記されているので、そのまま読むとこうなります。

条件内容
比較対象2024年4月時点の北海道電力「エネとくポイントプラン」
契約50A、年間の使用電力量4,462kWh
適用した割引マイホーム割引・ファミリー割引(4人世帯)・ペット割引
燃料費調整額2024年6月分の単価を適用
市場価格日本卸電力取引所のエリアプライス2024年4月分の実績
使い方電気料金単価が安い時間帯に使った場合

読むべき箇所が3つあります。

比較先が北海道電力である点です。北海道は9エリアの中で固定従量料金単価が24.20円と最も高い一方、もともとの電気料金水準も高い地域です。同じ計算を関西や九州で行えば、差額は同じにはなりません。

割引を3つ重ねた条件である点です。持ち家で4人世帯でペットがいる家が前提になっています。賃貸の一人暮らしでペットと暮らす家なら、マイホーム割引は付かず、ファミリー割引も1人世帯の0.11円に下がります。合計は0.66円で、広告の前提の半分以下です。

そして「電気料金単価が安い時間帯に使った場合」という条件です。前の章で見たとおり、留守番のためのエアコンはこの条件を満たせません。同社自身も「金額は目安であり、切り替え後の請求金額その他を保証するものではありません」と書き添えています。

広告の金額が誤っているという話ではなく、条件を自分の家に置き換えないと意味が変わるということです。年間4,462kWhは月平均372kWhにあたるので、まずは自分の使用量がそれより多いか少ないかを見るところから始まります。

ペットのいる家は、電気を使う時間をずらせない

市場連動型は、安い時間帯に電気を使うと得をする設計です。同社もマイページで30分ごとの単価を見られるようにしていて、洗濯機や食洗機を安い時間に回す使い方を勧めています。

ここでペットのいる家には固有の事情があります。エアコンだけは、安い時間に合わせて動かせません。 留守番している犬や猫のために回しているのだから、市場価格が高いからといって切るわけにいかないのです。

では、ずらせないその時間帯は高いのか安いのか。JEPXが公表している2025年度の30分値17,520コマから、東京エリアの時刻別平均を出して、固定単価を足した実効単価にしたのが次の図です。

実効単価(円/kWh・税込) 留守番 9〜17時 30 34 38 42 0時 3時 6時 9時 12時 15時 18時 21時 夏17時 43.1円 冬12時 31.7円 夏(7〜9月) 冬(12〜2月)
東京エリアの実効単価(固定従量料金22.00円+市場価格×1.1)。JEPX公表の2025年度スポット市場30分値から時刻別平均を算出。

夏と冬で形がまるで違います。

冬(12〜2月)は、日中がいちばん安い時間帯です。12時の実効単価は31.7円で、1日の中で最も低くなりました。太陽光の発電量が昼に集中するためです。留守番のために昼間エアコンを回す使い方は、冬に関しては市場連動型と噛み合っています。

夏(7〜9月)は逆でした。昼過ぎから価格が上がり始め、17時に43.1円で最高になります。冷房需要が伸びる一方で太陽光の出力が落ちていく時間帯です。この日は帰宅前後にあたるので、留守番の後半とちょうど重なります。

数字で並べると差がはっきりします。

区分全日平均留守番帯(9:00〜17:00)帰宅帯(16:00〜21:00)
通年12.45円11.75円15.61円
夏(7〜9月)13.34円13.82円17.95円
冬(12〜2月)11.48円10.39円13.65円

(東京エリアプライス・税抜・2025年度)

冬の留守番帯は全日平均より1.09円安く、夏の留守番帯は0.48円高い。そして夏の帰宅帯は全日平均より4.61円高くなっています。ペット割の0.55円は、この時間帯の振れ幅の中に埋もれる大きさです。

冬の朝、暖房を立ち上げる時間

冬の時刻別で見ると、7時台の市場価格が13.93円(税抜)と高くなっています。実効単価にすると37.32円(税込)です。深夜2〜4時の市場価格10.3円台より3.5円ほど高く、夕方のピーク(17時の14.16円)に近い水準です。暖房の立ち上げには大きな電力を使うので、その時間に重ねると単価の高い電気をまとめて買うことになります。

ペットのいる家には、ここで少し選択肢があります。飼い主が出かけたあとも暖房は続くので、立ち上げを起床時刻ちょうどに合わせなくてもよい家があるからです。10時を過ぎれば10円台前半まで落ちます。

ただし優先順位を取り違えないでください。子犬や老犬、短毛種の犬、腎臓の弱い猫にとって、冬の朝の冷え込みは体調に直結します。単価のために寒い時間を我慢させる話ではありません。動かせる余地があるのは、あくまで健康上の必要を満たしたうえでの部分です。

夏の夕方に自分でできることがあるとすれば、家族が帰ってきてから動かす家電を後ろにずらすことです。エアコンは動かせなくても、洗濯や食洗機や充電は21時以降に回せます。冬なら、昼のうちに部屋を暖めておくほうが単価としては有利です。

同じ使用量でも、人によって単価が変わる

変動従量料金は、月の平均価格に月の使用量を掛けているのではありません。30分ごとの使用量に、その30分の価格を掛けて足し上げます。

この違いが効きます。同じ450kWhを使った2軒でも、価格の安いコマに多く使った家と、高いコマに多く使った家では請求が変わります。月の平均価格が同じでも結果は同じになりません。

振れ幅は小さくありません。2025年度の東京エリアプライスを30分値で見ると、1kWhあたり0.01円のコマもあれば、45.01円のコマもありました。太陽光が余る春の昼にはほぼ無料に近づき、需要が張り付く時間帯には高値がつきます。

料金シミュレーションの結果と実際の請求がずれるのは、この構造のためです。シミュレーションは標準的な使い方を仮定して計算しますが、実際の家の使い方はそこから外れます。ペットのいる家は、留守番の時間帯に使用が寄るという意味で、標準からは外れる側です。

同社はマイページで30分ごとの単価を確認できるようにしています。契約したあとであれば、自分の家の使い方がどのコマに寄っているのかを実際に見られます。切り替える前の段階では、検針票の使用量と、この記事のエリア別の実効単価で当たりをつけることになります。

同じ割引でも、エリアで条件が変わる

ペット割は全国一律ですが、料金の本体はエリアで違います。固定単価も市場価格も地域差があるためです。9エリアそれぞれについて、2025年度の実績で実効単価を出しました。

エリア固定単価市場価格の年平均実効単価夏の留守番帯冬の留守番帯
北海道24.20円11.70円37.07円36.84円36.81円
東北22.00円11.39円34.53円34.44円32.85円
東京22.00円12.45円35.70円37.21円33.43円
中部22.00円11.36円34.50円36.41円32.34円
北陸22.00円10.81円33.89円36.23円31.70円
関西19.80円10.65円31.51円34.03円29.33円
中国22.00円10.21円33.23円32.92円31.44円
四国22.00円8.85円31.73円30.35円29.81円
九州19.80円9.81円30.60円30.56円28.41円

(単価は税込。市場価格はJEPXの2025年度エリアプライス平均・税抜)

九州と関西は固定単価が19.80円と低く、市場価格も安いため、実効単価が30円台前半で収まっています。九州の冬の留守番帯は28.41円で、9エリアの中で最も安い組み合わせでした。太陽光の導入量が多い地域ほど、昼の市場価格が下がるためです。

北海道は固定単価が24.20円と最も高く、夏と冬で留守番帯の単価がほとんど変わりません。日射による昼の値下がりが他エリアほど効かないためです。

同じペット割0.55円でも、実効単価30.60円の九州と37.07円の北海道では意味あいが違います。前者では単価の1.8%、後者では1.5%です。

市場が跳ねたとき、何が起きるか

変動従量料金には上限がありません。電気需給約款重要事項説明書、料金メニュー定義書のいずれにも、市場価格の高騰時に単価を頭打ちにする条項は置かれていません。同社も広告ページで「高い時間帯に電気を使った場合、電気代が高くなる可能性もあります」と書いています。

どのくらい動きうるのかは、過去の実績を見るのが早いです。2021年1月、寒波と燃料不足が重なって卸電力市場が急騰しました。JEPXのデータで東京エリアプライスを集計すると、この月の平均は66.53円/kWh、最高値は252.00円/kWhでした。2025年度の平均12.45円の5倍を超える水準が1か月続いたことになります。

同じ計算式を当てはめると、こうなります。

月450kWh使ったときの従量料金(東京・税込) 2025年度の冬(12〜2月)平均 実効 34.63円/kWh 約15,582円 2025年度の夏(7〜9月)平均 実効 36.67円/kWh 約16,503円 2021年1月と同じ水準が続いた場合 実効 95.19円/kWh 約42,834円 ペット割で引かれるのは、どの場合も月およそ248円
東京エリアで月450kWh使った場合の従量料金の試算(再エネ賦課金を除く・概算)。市場価格はJEPX公表のスポット市場実績値の期間平均を使用。

2025年度の冬の平均なら約15,582円のところ、2021年1月と同じ市場価格が続けば約42,834円です。差は27,000円を超えます。ペット割で引かれるのは、どの場合も月およそ248円で変わりません。

この計算は仮定の上に立っています。同社が小売電気事業者に登録したのは2024年5月で、2021年1月には電気を供給していません。当時この会社と契約していた人がいるわけではない、という点は押さえておいてください。市場連動という料金設計が過去に何を起こしたか、という話です。

とはいえ、上限を定める条項がない以上、同じことが起きたときに料金が抑えられる根拠も契約書類の中にはありません。ペット割が年間3,000円ほどなのに対し、市場が動けば1か月で27,000円変わりうる。この非対称を分かったうえで選ぶかどうかが、実際の判断だと思います。

「高くなった」と言われるときに起きていること

市場連動型に切り替えて請求が上がるとき、原因はだいたい3つのどれかです。

1つ目は、固定側の単価がもともと安くはないことです。東京エリアで22.00円/kWhというのは、これに市場価格が丸ごと乗る前提の数字です。市場価格が2025年度の平均と同じ12.45円なら実効35.70円になり、いま契約している会社の単価と大きく変わらない水準に落ち着きます。基本料金がなくなるぶんだけ有利になりますが、単価そのものが劇的に下がるわけではありません。

2つ目は、使う時間帯です。夏の15時から19時は東京で実効40円前後になります。この時間に冷房と調理と洗濯が重なれば、平均より高い単価の電気を多く買うことになります。冬の朝7時台も実効37.32円(税込)と高めで、暖房の立ち上げと重なりやすい時間です。

3つ目は、市場価格そのものが上がった月に当たったことです。燃料価格や天候で月平均が動くため、去年の同じ月と比べても一致しません。基本料金と燃料費調整額をなくした設計は、その変動を利用者が直接引き受ける設計でもあります。

ペットのいる家で確かめるなら、請求額を使用量で割った1kWhあたりの単価を、月ごとに並べてみてください。使用量が増えたから高いのか、単価が上がったから高いのかが切り分けられます。単価が上がっているなら、それは使い方ではなく市場の側の話です。

「怪しい」と言われる会社の基本情報を、登記で確かめる

聞いたことのない社名の電力会社に、電気という止まると困るものを預けるのは不安なものです。会社の実体は、公的な登記情報で確認できます。

国税庁の法人番号公表サイトと、経済産業省が運営するgBizINFO、それに同社の企業情報を突き合わせた結果です。

項目内容出所
商号株式会社リボンエナジー国税庁 法人番号公表サイト
法人番号7010001239852同上
本店所在地東京都中央区銀座6丁目12番2号同上
法人番号指定年月日令和5年11月7日同上
本店の移転令和6年4月1日に移転(旧所在地は東京都中央区銀座7丁目13番6号)同上
事業所東京銀座ビルディング202号室gBizINFO
事業所の被保険者数8人(基本情報の「従業員数」欄は空欄)gBizINFO
代表者代表取締役 佐々木広夢同社 企業情報
設立日2023年11月1日同上
資本金5,500万円同上
小売電気事業者登録番号A0886(登録日 2024年5月14日)同社 お知らせ
電話050-1721-4564(平日10:00〜17:00)同社 特定商取引法に基づく表記

登記は実在し、小売電気事業者の登録番号も公表されています。登録小売電気事業者は資源エネルギー庁が一覧を公表しているので、番号は自分でも照らし合わせられます。

読み取れることを素直に書くと、設立から3年に満たない会社です。gBizINFOの事業所情報では、社会保険の被保険者数が8人と表示されています(基本情報の従業員数欄は空欄なので、これが社員数と一致するとはかぎりません)。所在地は銀座のビルの1室です。

ただし電気の小売は、発電も送配電網も他社の設備を使って行う事業です。会社が小さいこと自体は、登録事業者としての適格性とは別の話になります。

供給される電気そのものは変わりません。送配電網は地域の一般送配電事業者が引き続き運用するため、契約先を変えても停電しやすくなることはない、と同社のよくあるご質問にも明記されています。これは電力自由化の仕組み上そのとおりです。

「怪しい」という言葉で心配されているのが会社の実在なら、以上のとおり確認できます。心配すべき対象はむしろ、前の章で見た料金設計のほうだと思います。

割引の条件は、了承なく変わることがある

いま0.55円/kWhでも、この先ずっと同じとはかぎりません。重要事項説明書12(1)に、こうあります。

当社は、一般送配電事業者が定める託送供給等約款の改定、関係法令等の改正、社会的経済的な影響等その他当社が必要と判断した場合には、民法第548条の4の定型約款の変更の規定に従い、お客さまの了承を得ることなく、「電気需給約款」「電気料金メニュー定義書」「付帯メニュー定義書」を変更することがあります。

付帯メニュー定義書というのが、ペット割の条件を定めている文書です。単価も適用条件も、この規定で変更されうるということになります。変更するときはウェブサイトなどで知らされます。

割引そのものを廃止する場合については、定義書2(2)に「あらかじめ一定期間、廃止の案内および廃止日を、当社ウェブサイトへの掲載その他の方法によりお知らせします」と定められています。ある日いきなり消えるのではなく、事前の告知が置かれる形です。

定型約款の変更は電力会社に限らず広く使われている仕組みなので、この会社に特有の話ではありません。押さえておきたいのは、ペット割を理由に切り替えたとしても、その割引は契約の期間中ずっと保証されたものではないという点です。解約金がないぶん、条件が変わったら移れるという受け止め方になります。

会社の側から解約されることもある

重要事項説明書12には、同社から契約を解約する場合も書かれています。支払い状況などから契約の継続が困難と判断した場合、支払期限日を過ぎても電気料金が支払われない場合、約款に違反した場合です。移転して電気を使っていないことが明らかなときは契約が終了することがあります。

支払いがクレジットカードなので、カードの有効期限切れや限度額超過で決済が通らない状態が続くと、この条項に触れる可能性があります。カードを更新したときは、マイページの登録情報も更新しておいてください。ペットのいる家で電気が止まると、留守番中の冷暖房が落ちます。他の支払いより優先度を上げておく理由があります。

契約する前に確認しておきたいこと

公式資料から、事前に知っておくと戸惑わない項目を拾いました。

支払い方法はクレジットカードが前提

特定商取引法に基づく表記のお支払い方法は「クレジットカード」の一項目だけで、よくあるご質問ではクレジットカード・Apple Pay・Google Payが挙げられています。口座振替やコンビニ払いは案内されていません。カードを持たない世帯や、公共料金を口座振替でまとめている家庭は、ここで引っかかる可能性があります。

解約金と契約期間の縛りはない

よくあるご質問に「いずれもありません」と書かれています。合わなければ戻せるという点は、市場連動型を試すときの安心材料になります。

引越しでの解約は7営業日前までに連絡する

重要事項説明書11(2)に「引越し(転出)等の理由による解約の場合は、最後に電気を使用する日の7営業日前までにご連絡ください」とあります。他社への切り替えで解約する場合は、新しい会社に申し込めば手続きが進みます。

切り替えには供給地点特定番号(22桁)が要る

いま契約している会社の検針票かマイページに載っています。申し込みから切り替えまでは通常7日程度、引越し先での利用開始は利用開始日の2日前までに手続きが必要と案内されています。

キャンペーンの割引は6か月で終わる

同社は2種類のキャンペーンを実施しています。2025年9月1日から始まった電気代割引と、2026年8月1日から始まったファミリー割引増額キャンペーンです。どちらも1kWhあたり0.55円(税込)で、利用開始後の1回目の検針日から7回目の検針日の前日まで、つまり6か月で終わります。後者はファミリー割引(2人〜5人以上世帯)が適用されている人が対象で、ファミリー割引に加えて適用されます。

どちらも終了日未定と書かれており、内容が変わることもあります。ペット割のような常時の割引と、期間限定のキャンペーンを混同しないでください。シミュレーションの金額にキャンペーン分が含まれていると、7か月目から請求が上がります。

ペット割で得になりやすい家、そうでない家

ここまでの数字を、家の条件に当てはめて整理します。

得になりやすいのは、割引が3つ以上重なる家です。持ち家でペットがいて、太陽光か蓄電池かEVがある。この組み合わせなら1.65円/kWh以上引かれるので、月450kWhで740円ほどになります。世帯人数が多ければさらに乗ります。

九州・関西・四国のように市場価格が低いエリアも有利です。実効単価が30円台前半に収まるうえ、冬の昼は28円台まで下がります。

昼に人がいない家も相性がよい面があります。冬に限れば、留守番のためのエアコンがちょうど安い時間帯に当たるためです。

一方で慎重に考えたほうがよいのは、一人暮らしでペットと暮らしている家です。ファミリー割引が0.11円にとどまり、賃貸ならマイホーム割引も付きません。ペット割の0.55円にファミリー割引の0.11円を足しても0.66円で、割引の合計は伸びません。

夏の在宅時間が長い家も注意が必要です。15時から19時が最も高い時間帯なので、その時間に冷房と家事が重なると単価の高い電気を多く使うことになります。

そして毎月の請求額が読めないと困る家計には、市場連動型そのものが向きません。上限がない以上、寒波や燃料高で市場が動けば請求も動きます。ペットのために冷暖房を落とせない家は、使用量を絞って調整する余地も限られます。

乗り換えを考えるなら、先にやっておくこと

数字を持たずに比べても判断できないので、順序をつけておきます。

いまの検針票を1年分そろえて、月ごとの使用電力量を書き出します。ペットのいる家は夏と冬に山が来るはずで、その山の高さが判断の材料になります。

次に、請求額を使用量で割って1kWhあたりの単価を出します。この記事のエリア別の表と比べれば、市場価格が2025年度並みならどちらが安いかが見えます。

そのうえで、山の月に市場が跳ねたらどうなるかを確かめます。夏や冬のいちばん使う月の使用量に、実効単価95円(2021年1月の水準)を掛けてみてください。その金額を払えるかどうかが、市場連動型を選べるかどうかの分かれ目です。

ペットのいる家の電気代そのものを下げたい場合は、契約先の見直しとは別に、機器の使い方で減らせる部分があります。エアコンの設定や留守番中の室温管理についてはペットのためにエアコンつけっぱなし。電気代はいくら増える?に、夏の熱中症を防ぐための設定温度はペットの暑さ対策と留守番中のエアコン設定にまとめています。

電気代は毎月の飼育費の一部です。全体の中でどのくらいの位置を占めるのかは、犬を飼うと月いくらかかる?猫を飼うと月いくら?と並べて見ると掴みやすくなります。自動給水器などの常時通電する機器の費用はペットの水道代を抑えるコツでも触れています。

まとめ

リボンエナジーのペット割は、1kWhあたり0.55円(税込)。全国どのエリアでも同額で、月350kWhの家ならおよそ193円、年間で2,300円ほどが引かれます。犬や猫だけでなく、うさぎ・ハムスター・フェレット・熱帯魚・インコも案内ページに挙げられています。頭数でも変わりません。ただし適用には同社の審査があります。

その一方で、料金の本体は日本卸電力取引所の30分ごとの市場価格に連動します。2025年度の東京エリアの実績で計算すると実効単価は35.70円/kWh、時間帯によって31円台から43円台まで動きました。2021年1月には月平均66.53円という水準もありました。

ペット割の年間2,000〜3,000円ほどと、市場価格が動いたときの振れ幅は桁が違います。割引がいくつ付くかで選ぶのではなく、請求額が動くことを受け入れられるかどうかで決める。 ペットのために冷暖房を止められない家ほど、この判断が重くなります。

参考情報・出典

料金と割引の条件は、株式会社リボンエナジーが公開している約款・定義書のPDFで確認しました(2026年8月26日時点)。

市場価格と会社情報は、次の公的な資料から取りました。

料金・割引・キャンペーンの内容は変更されることがあります。申し込みの前に公式サイトで最新の条件をご確認ください。本記事は特定の電力会社への切り替えを勧めるものではなく、当社はリボンエナジーと提携関係にありません。