猫伝染性腹膜炎(FIP)は、猫コロナウイルスが体内で変異して発症すると考えられる重い病気です。以前は治療選択肢が限られていましたが、近年はGS-441524、レムデシビル、モルヌピラビルなどの抗ウイルス薬を用いた治療を行う動物病院が増えています。

ただし、2026年4月時点で、モルヌピラビルは猫FIP治療薬として国内承認された動物用医薬品ではありません。治療の可否、費用、副作用、見通しは症例ごとに違います。この記事では、費用の考え方と病院選びを中心に整理します。

FIPで見られる症状

FIPは若い猫で多いとされますが、成猫でも発症することがあります。症状は、発熱、食欲低下、体重減少、元気消失、腹水、胸水、黄疸、目の濁り、神経症状などさまざまです。

腹水や胸水がたまるウェットタイプ、臓器や神経・目に病変が出るドライタイプ、両方が混じるタイプがあります。症状だけで確定する病気ではなく、血液検査、画像検査、蛋白分画、外注検査などを組み合わせて診断します。

検査費用の目安

項目費用の目安内容
初診・再診1,000〜5,000円状態確認、問診
血液検査8,000〜20,000円炎症、貧血、肝腎機能など
レントゲン・エコー5,000〜20,000円腹水、胸水、臓器の確認
外注検査10,000〜40,000円FCoV関連検査、蛋白分画など
初期診断の合計30,000〜80,000円症状により変動

日本獣医師会の診療料金実態調査の考え方どおり、実際の会計は複数項目の合算です。FIPは他の病気との鑑別が必要なため、初診日から検査費がまとまって発生しやすい病気です。

治療費の目安

FIP治療は、抗ウイルス薬を84日間前後続ける設計が多く見られます。費用は体重、薬剤、症状、入院の有無、通院頻度で変わります。

ケース費用の目安主な内訳
軽症・在宅投薬中心100,000〜300,000円診断、薬、定期血液検査
標準的な通院治療200,000〜400,000円薬、2〜4週ごとの検査、再診
入院・重症例300,000〜600,000円以上入院、点滴、酸素、注射薬、検査

一部の動物病院では、モルヌピラビルを用いた治療で10万〜20万円台の費用例を公開しています。一方、入院や神経症状がある場合は薬の量や管理が増え、総額が上がります。公開費用はあくまで症例例であり、同じ金額で治療できるとは限りません。

ペット保険の扱い

FIPは病気の治療なので、補償開始後に発症し、約款上の対象外に該当しなければ保険対象になり得ます。ただし注意点があります。

加入前から発熱、腹水、体重減少などがあり、その後FIPと診断された場合は、既往症または加入前発症と判断される可能性があります。待機期間がある保険では、待機期間中の発症も対象外になりやすいです。

また、ペット&ファミリーの一部商品では、過去に猫伝染性腹膜炎と診断・治療された場合に加入できない疾病として案内されています。会社ごとに扱いが違うため、FIPを心配するなら加入前に対象外疾病と待機期間を確認してください。

病院選びのチェックポイント

FIP治療では、費用だけでなく説明の丁寧さが重要です。確認したいのは、診断根拠、使う薬の種類、薬が国内承認薬ではない場合の説明、想定費用、検査頻度、副作用時の対応、夜間急変時の連絡方法です。

「改善する」と断定する説明や、検査なしで高額な薬だけを勧める説明には慎重になりましょう。FIPは進行が早いことがある一方で、似た症状の病気もあります。必要に応じて、猫専門病院や二次診療施設に相談する選択肢もあります。

家計面で準備すること

FIPは短期間にまとまった費用が必要になりやすい病気です。治療を始める前に、初月に必要な金額、84日間の総額、途中で入院した場合の追加費用、支払い方法を確認してください。

後日請求型の保険では、薬代や検査費をいったん全額支払う必要があります。カード限度額や医療費積立を確認しておくと、治療継続の判断がしやすくなります。

まとめ

猫のFIP治療費は、軽症の在宅投薬中心で10万〜30万円程度、入院や重症例では30万〜60万円以上になることがあります。モルヌピラビルなどにより治療選択肢は広がっていますが、2026年4月時点で国内承認された猫FIP治療薬ではない点に注意が必要です。保険は発症時期と約款条件で扱いが変わるため、診療明細と検査結果を保管し、保険会社へ早めに確認しましょう。

関連記事: 猫の医療費は年間いくら?病気別の治療費と備え方を解説 関連記事: ペット保険の請求方法と流れ。必要書類と支払い時期


数値・情報の参照元

  • 動物医療費: 公益社団法人日本獣医師会「家庭飼育動物(犬・猫)の診療料金実態調査結果」をもとに編集部が整理
  • ペット保険の補償内容・保険料: 各保険会社公式サイト(2026年4月確認)
  • 飼育費・節約Tips: アニコム家庭どうぶつ白書および年間支出調査の公開データをもとに編集部が整理
  • 掲載数値・補償内容は参考値です。実際の保険料・補償条件は加入時の年齢・プランにより異なるため、各社公式サイトでご確認ください