犬と猫のどちらを飼おうか迷っているとき、飼育費用の違いは判断材料の一つになります。「犬の方がお金がかかる」と言われることが多いものの、項目ごとに見ていくと差の生まれ方にはっきりした傾向があります。

アニコム損保の「家庭どうぶつ白書2023」によると、犬の年間飼育費用の平均は約35万円、猫は約17万円です。ここからは項目別に内訳を分解して、どこにどれだけの差があるのかを確認していきます。

年間飼育費用の全体比較

一般的なサイズ(犬は小型犬、猫は標準的な体格)で比較した年間費用の全体像です。

費用項目犬(小型犬)差額
フード代36,000〜60,000円24,000〜48,000円犬が+12,000円
おやつ6,000〜12,000円3,000〜8,000円犬が+3,000円
トリミング60,000〜120,000円0〜10,000円犬が+50,000〜110,000円
ペット保険24,000〜42,000円18,000〜36,000円犬が+6,000円
医療費(予防)25,000〜40,000円10,000〜20,000円犬が+15,000円
日用品・消耗品18,000〜36,000円15,000〜30,000円犬が+3,000円
トイレ用品12,000〜18,000円12,000〜24,000円ほぼ同等
おもちゃ6,000〜12,000円3,000〜8,000円犬が+3,000円
合計(年間)187,000〜340,000円85,000〜184,000円犬が+10万〜15万円

年間の合計で10万〜15万円、犬の方が多くかかるのが一般的な傾向です。この差額の大半を占めているのがトリミング代と予防医療費で、2項目だけで年間7万〜13万円の開きがあります。逆に言えば、トリミング不要の短毛犬種を選べば、犬と猫の年間費用差はかなり縮まります。

フード代の比較

犬のフード代は小型犬でも月3,000〜5,000円が相場です。体重3〜5kgのチワワやポメラニアンでもドライフードを月2〜3kg消費し、プレミアムフード(ロイヤルカナン、ヒルズ、ニュートロなど)を選ぶと月4,000〜5,000円になります。中型犬では月5,000〜8,000円、大型犬になると月8,000〜15,000円と、体重に比例してフード代が跳ね上がります。

猫のフード代は月2,000〜4,000円程度で、犬に比べると食事量が少ないぶん費用は抑えめです。体重4kgの成猫でドライフードの消費量は月1.5〜2kg程度で、ロイヤルカナンのインドア(室内猫用)であれば2kgで3,000〜3,500円が目安になります。

ただし猫は泌尿器系のトラブルを起こしやすい動物です。尿路結石や膀胱炎を防ぐために療法食に切り替えると、通常のフードの1.5〜2倍の費用がかかります。ロイヤルカナンのユリナリーS/O(2kg)は3,800〜4,200円程度で、通常フードとの差額は年間で6,000〜10,000円ほどです。持病がある猫の場合、フード代だけで見れば犬と変わらない金額になることもあります。

トリミング代 ── 最大の差がつく項目

犬と猫の飼育費用に最も大きな差をつけているのがトリミング代です。

犬種1回の費用頻度年間費用
トイプードル6,000〜10,000円月1回72,000〜120,000円
シーズー5,000〜8,000円月1回60,000〜96,000円
柴犬(シャンプーのみ)4,000〜6,000円2〜3ヶ月に1回16,000〜36,000円
ラブラドール(シャンプーのみ)6,000〜9,000円2〜3ヶ月に1回24,000〜54,000円
猫(長毛種・サロン利用の場合)5,000〜8,000円年1〜2回5,000〜16,000円
猫(短毛種)0円不要0円

トイプードルやシーズーのように被毛が伸び続けるシングルコートの犬種は、月1回のカットが欠かせません。カットを怠ると毛玉ができて皮膚トラブルの原因になるため、「節約のためにサロンに行かない」という選択が取りにくいのが実情です。

猫は基本的にトリミングサロンに通う必要がありません。長毛種(ペルシャ、ラグドール、メインクーンなど)でも自宅でのブラッシングで対応でき、サロンを利用するとしても年に1〜2回程度です。この項目だけで年間5万〜11万円の差がつきます。

犬を飼う予定で費用を抑えたいなら、カット不要の短毛犬種(柴犬、ビーグル、ラブラドールなど)を選ぶのも一つの方法です。シャンプーコースだけの利用に絞れば、年間のトリミング費用を2万〜4万円程度に収められます。

予防医療費の違い

犬には猫にはない法律上の義務があり、これが予防医療費の差に直結しています。

予防項目
狂犬病ワクチン(義務)3,000〜4,000円/年不要
混合ワクチン5,000〜8,000円/年3,000〜6,000円/年
フィラリア予防7,000〜16,000円/年(月1,000〜2,000円×7〜8ヶ月)完全室内飼いなら不要の場合も
ノミダニ予防12,000〜18,000円/年6,000〜12,000円/年
畜犬登録3,000円(初回のみ)不要
合計(年間)27,000〜46,000円9,000〜18,000円

狂犬病ワクチンは狂犬病予防法で年1回の接種が義務づけられており、犬を飼う以上は避けられない出費です。フィラリア予防薬も犬にとっては必須で、蚊の活動期間(4月〜11月ごろ)に毎月投与します。チュアブルタイプのフィラリア予防薬(ネクスガードスペクトラなど)は1回分で1,500〜2,500円が相場です。

猫は完全室内飼いであればフィラリア予防が不要な場合が多く、ノミダニ予防もスポットタイプの薬(フロントラインプラスなど)を月1回投与する程度で済みます。犬のように法律上の義務がないぶん、予防にかかる費用は犬の半分以下に抑えられます。

日用品・消耗品の差

犬はリードや首輪の買い替え、散歩用のマナー袋(ウンチ袋)、足拭きタオルなど、散歩関連の消耗品が定期的に発生します。マナー袋だけでも年間2,000〜4,000円、リードや首輪の買い替えに年間3,000〜8,000円かかるのが一般的です。

猫は散歩グッズが不要な代わりに、爪とぎの交換が定期的な出費になります。段ボール製の爪とぎは月1〜2個のペースで消耗し、1個300〜800円が相場です。キャットタワーの支柱カバーの交換(年1〜2回、1,000〜3,000円/回)も猫特有の消耗品費です。

全体としては犬の方が年間3,000〜6,000円ほど高くなる傾向ですが、トリミング代や医療費ほどの大差はつきません。

大型犬になると費用差はさらに拡大する

ここまでは小型犬と猫の比較でしたが、大型犬になると費用は大幅に増加します。

費用項目大型犬差額
フード代96,000〜180,000円24,000〜48,000円+72,000〜132,000円
トリミング60,000〜180,000円0〜10,000円+50,000〜170,000円
ペット保険36,000〜60,000円18,000〜36,000円+18,000〜24,000円
医療費(予防)30,000〜50,000円10,000〜20,000円+20,000〜30,000円
合計(年間)300,000〜560,000円85,000〜184,000円+20万〜37万円

大型犬と猫の年間費用差は20万〜37万円です。平均寿命を大型犬12年、猫15年として生涯費用を概算すると、大型犬は360万〜670万円、猫は130万〜280万円になり、差額は230万〜390万円にも達します。

大型犬はフード代だけで月8,000〜15,000円かかるほか、トリミングも1回あたり1万〜2万円と高額になります。ゴールデンレトリバーのカットコースは1回10,000〜15,000円が相場で、月1回通えば年間12万〜18万円です。

突発的な医療費の傾向

通常の年間費用だけでなく、突発的に発生する高額医療費についても犬と猫で傾向が異なります。

特徴
高額になりやすい疾患骨折、腫瘍、椎間板ヘルニア、膝蓋骨脱臼慢性腎臓病、尿路結石、甲状腺機能亢進症
1回の手術費用15万〜50万円8万〜25万円
慢性疾患の月額治療費1万〜3万円1万〜5万円
生涯医療費の傾向手術で一時的に高額になりやすい慢性疾患の長期治療で累計が膨らみやすい

犬は骨折や膝蓋骨脱臼(パテラ)などの整形外科系トラブルが発生しやすく、手術費用は1回で15万〜50万円かかるケースがあります。特にトイプードルやチワワなどの小型犬はパテラの好発犬種で、グレード3以上の手術では片足30万〜50万円の出費になります。

猫は慢性腎臓病が代表的な高額疾患です。シニア期(10歳以上)の猫の約30%が罹患するとされ、治療は皮下点滴(1回2,000〜4,000円)の定期通院や療法食(月3,000〜5,000円)が数年間にわたって続きます。月あたりの治療費は犬の手術ほど高額にはなりにくいものの、累計すると100万円を超えるケースもあります。

飼育費用を抑える共通のポイント

犬でも猫でも、飼育費用を抑えるための基本的な考え方は共通しています。

フードは必ずしも高価なものが正解とは限りません。AAFCOの栄養基準を満たした総合栄養食であれば、手頃な価格帯のフードでも十分な栄養が取れます。ピュリナワンやメディファスといった中価格帯のフードはコスパに優れ、スーパーやドラッグストアでも手に入る手軽さがあります。

定期的な健康診断は「コスト」ではなく「投資」として捉えるべきです。年1回の健康診断は5,000〜10,000円程度ですが、慢性腎臓病や腫瘍を早期に発見できれば、治療の選択肢が広がり、結果的に数十万円の治療費削減につながる可能性があります。シニア期(犬7歳〜、猫7歳〜)に入ったら年2回の検診を検討してもよいでしょう。

ペット保険に加入するかどうかは、月々の保険料と万が一の高額医療費のリスクを天秤にかけて判断します。犬の70%補償プランで月2,000〜3,500円、猫なら月1,800〜3,000円が相場です。0歳のうちに加入すると保険料が最も安く、既往歴による加入拒否のリスクもないため、検討するなら早い段階が有利です。

フードやトイレ用品のまとめ買いも地味ながら効果的な節約手段です。Amazonの定期おトク便を利用すれば5〜15%の割引が適用され、年間で5,000〜15,000円の節約になります。

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参考情報

年間飼育費用の全体値(犬約35万円、猫約17万円)はアニコム損保「家庭どうぶつ白書2023」のデータに基づいています。フード・トリミング・保険等の個別費用は各ブランド公式サイト、Amazon・楽天市場の実勢価格(2026年4月確認)、および一般社団法人ペットフード協会「2024年 全国犬猫飼育実態調査」を参考にしました。予防医療費はフィラリア予防薬・ワクチンの動物病院での一般的な価格帯を参照しています。実際の費用は地域・動物病院・フードの選択によって異なります。

犬と猫の年間飼育費用は、小型犬と猫の比較で約10万〜15万円、大型犬と猫では20万〜37万円の差があります。差額のうち最大の要因はトリミング代で、カットが必要な犬種かどうかで年間5万〜12万円の差が生まれます。

どちらを飼うかは費用だけで決めるものではありませんが、10年以上にわたる飼育期間を考えると、年間費用の差は生涯で100万〜400万円のインパクトになります。家族構成やライフスタイル、住環境とあわせて、長期的な経済面も含めた飼育計画を立てておくと安心です。