犬と猫の両方を飼っている人、あるいはこれから両方を迎えたい人にとって、賃貸の物件探しは想像以上に骨が折れます。「ペット可」と書かれた物件でも、実際は「小型犬1匹のみ」「猫は不可」という制限が多く、犬と猫の両方を受け入れてくれる物件はかなり限られるためです。

一般社団法人ペットフード協会の「2024年全国犬猫飼育実態調査」によると、国内の犬の飼育頭数は約679万頭、猫は約915万頭。犬猫の両方を飼育する世帯も一定数存在し、需要はあるにもかかわらず住まいの選択肢が追いついていないのが実情です。この記事では、犬猫両方OKの物件の実態から、費用・交渉・間取り選びまでを整理しました。

犬猫両方OKの賃貸物件はどれくらいあるか

賃貸市場で「犬も猫も飼える」物件は、体感よりもずっと少ない状況です。東京23区を例にすると、全賃貸物件のうちペット可は約15〜30%(エリアにより差が大きく、港区28%前後に対し江戸川区は7%程度)。そのペット可物件のなかでも、猫の飼育まで明確に認めている物件は6割前後にとどまります。犬猫両方かつ2匹以上となると、選べる物件はさらに絞り込まれます。

この制限が生まれる背景には、犬と猫で建物に与えるダメージの性質がまったく違うという事情があります。

ペットの種類代表的な建物ダメージオーナーが懸念するポイント
フローリングの爪傷、鳴き声による騒音近隣トラブルの発生
壁紙への爪とぎ、マーキング(尿スプレー)原状回復費用の高額化
犬+猫上記の複合ダメージ修繕コストの見通しが立てにくい

猫の爪とぎで壁紙が損傷すると、1面あたりの張り替え費用は4〜7万円が相場です。下地ボードまで傷んでいれば修繕費が加わり、合計で1面あたり10万円を超えることもあります。マーキングのにおいが壁の下地材に染み込んだケースでは、ボードごと交換して8〜10万円に跳ね上がる事例も珍しくありません。オーナーが猫の飼育に慎重になるのは、こうしたコスト面のリスクが理由です。

犬猫OKの賃貸物件を見つける3つのアプローチ

物件を探す方法は大きく3つに分かれます。それぞれメリットと限界があるため、複数を並行して進めるのが現実的です。

不動産ポータルサイトで絞り込む

SUUMOやHOME’Sには「犬猫両方OK」という検索条件がありません。「ペット可」で絞り込んだうえで、物件詳細の備考欄に「犬・猫可」「2匹まで飼育可」と書かれているかを1件ずつ確認する作業が必要です。HOME’Sでは「犬と猫と暮らす」というハッシュタグページがあり、犬猫同居対応の物件をまとめて探せます。

検索のコツとしては、築年数が浅いペット共生型物件を優先すること、建物構造は鉄筋コンクリート造(RC造)を選ぶことが挙げられます。RC造は防音性が高く、犬の鳴き声を理由に「猫まで不可」とする必要がないため、犬猫両方を受け入れやすい構造です。ポータルサイトごとの検索機能の違いについてはSUUMOとHOME’Sのペット可検索の違いで比較しています。

不動産会社に直接相談する

最も効率がよいのは、不動産会社に「犬と猫を両方飼いたい」と伝えて物件を探してもらう方法です。ポータルに載っていない非公開物件や、オーナーとの交渉ルートを持っている会社であれば、自力検索では見つからない物件が出てくることがあります。

ペット可物件を多く扱う会社としては、ペットホームウェブやスマイリア、犬猫不動産などペット特化型の仲介会社が存在します。相談時には「ペットの種類・体重・頭数・飼育年数」を伝えると絞り込みがスムーズに進みます。

ペット共生型マンションを狙う

ペットとの暮らしを前提に設計されたペット共生型マンションは、犬猫両方の飼育を認めている物件が多い傾向にあります。足洗い場やペット用汚物処理スペース、ドッグランなど専用設備が整っており、物件によっては犬猫合計3匹まで対応しているケースもあります。代表的なブランドとしてはヘーベルメゾン(+わん+にゃん)、Dear WAN Court、大東建託のにゃんRoom/わんRoomなどがあります。

家賃は同エリアの一般物件と比べて1〜2割高めですが、防音性や床材の耐久性が考慮されているぶん、退去時の原状回復費用が抑えられるケースもあります。物件数が限られているため、空室を見つけたら早めに動くのが鉄則です。

大家交渉を成功させるための具体的な準備

「ペット相談可」の物件や、ペット可だが頭数制限がある物件で犬猫2匹の飼育許可を得たい場合、口頭で「お願いします」と伝えるだけではなかなか通りません。オーナーが抱えるリスクを具体的にカバーする条件を、書面にまとめて提示するのが効果的です。

上位記事では「交渉しましょう」で話が終わっているものが大半ですが、実際に交渉を成立させるには「何を」「どう提示するか」が重要になります。交渉材料として有効なのは、金銭面の上乗せ提案、飼育環境の証明、定期点検の受け入れの3つです。

交渉材料具体的な提示内容オーナーにとってのメリット
敷金の上乗せ通常2ヶ月→3ヶ月分を提案退去時の修繕費リスクが下がる
ペット飼育費の増額月額3,000円→6,000〜10,000円を提案長期的な収益増
ペットの写真付きプロフィール種類・体重・性格・しつけ状況を記載具体像がわかり不安が軽減する
定期室内点検の受け入れ3ヶ月に1回の点検を承諾する旨を記載物件の状態を継続的に確認できる
損害賠償の特約受け入れペット起因の損傷は全額借主負担と明記修繕費の回収リスクがなくなる

不動産業界の閑散期にあたる6〜8月は入居者が決まりにくく、オーナーが条件交渉に応じやすい時期です。交渉のタイミングとして覚えておくと有利に働くことがあります。

成功事例としては、「3年以上の長期契約・敷金3ヶ月分・3ヶ月ごとの室内点検OK」という条件を提示して猫3匹の飼育許可を得たケースが報告されています(賃貸スタイルコラムより)。

犬猫2匹飼いの初期費用シミュレーション

犬猫両方で賃貸を借りる場合、契約時の費用は1匹飼いよりも確実に上がります。家賃10万円の1LDK(東京23区想定)で、1匹飼いと犬猫2匹飼いを比較してみます。

費用項目1匹飼い犬猫2匹飼い差額
敷金20万円(2ヶ月分)25〜30万円(2.5〜3ヶ月分)+5〜10万円
礼金10万円(1ヶ月分)10万円(1ヶ月分)0円
仲介手数料11万円(1ヶ月分+税)11万円(1ヶ月分+税)0円
火災保険料1.5〜2万円1.5〜2万円0円
前家賃10万円10万円0円
初期費用合計約52.5〜53万円約57.5〜63万円+5〜10万円
ペット飼育費(月額)3,000円6,000〜10,000円+3,000〜7,000円

敷金の上乗せが最大の差額要因です。月額のペット飼育費の差も年間では3.6〜8.4万円の追加コストになるため、入居前にトータルの資金計画を立てておく必要があります。退去時の原状回復費用の目安についてはペット可物件の原状回復ガイドで詳しく解説しています。

なお、国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、ペット飼育による傷やにおいは通常損耗には含まれず、借主負担となるのが原則です。ただし経過年数による減価償却は適用されるため、入居時に室内の状態を写真で記録しておくことがトラブル防止につながります。

犬猫同居に適した間取りと広さの選び方

犬と猫がストレスなく同居するには、それぞれの習性に合った空間を確保できるかどうかがカギになります。猫は高い場所を好み、犬は床面で過ごす動物。この違いを活かして「縦の空間は猫、横の空間は犬」と棲み分けるのが基本です。

間取り面積目安犬猫同居の評価家賃目安(東京23区)
1K20〜25平米厳しい。お互いの逃げ場がない8〜10万円
2K / 1LDK30〜40平米犬猫各1匹なら現実的な最低ライン12〜16万円
2LDK45〜55平米ゆとりあり。来客時の隔離も可能16〜22万円
3LDK60平米以上理想的。犬猫それぞれの専用スペースを確保できる20万円〜

犬猫各1匹であれば2K以上(30平米以上)が目安です。犬と猫がそれぞれ別の部屋に退避できる環境があると、お互いのストレスが大幅に軽減されます。1Kやワンルームでも飼えなくはありませんが、犬猫の相性が悪かった場合に逃げ場がなくなり、トラブルが深刻化しやすくなります。

見落とされがちなのが玄関まわりの動線です。犬の散歩で玄関を開けた瞬間に猫が飛び出す事故は頻繁に報告されています。突っ張り棒タイプの脱走防止柵であれば3,000〜8,000円程度で導入でき、賃貸の壁や床を傷つけずに設置できます。物件の内見時には、玄関からリビングまでの動線に柵を設置できるスペースがあるかを必ず確認してください。

犬と猫の初対面と慣らしの進め方

すでに犬を飼っていて新たに猫を迎える場合(またはその逆)、初日からいきなり同じ部屋で過ごさせるのは避けるべきです。段階を踏んで慣らしていく必要があります。

最初の1〜2週間は完全に別の部屋で生活させます。この期間にお互いの使用済みタオルを交換して、においに慣れさせるのが有効です。視覚的な接触はまだ行わず、ドア越しにお互いの気配を感じる程度にとどめます。

2週目以降、ドアを少しだけ開けて短時間の対面を試みます。犬にはリードをつけた状態で行い、猫が逃げられる高い場所(キャットタワーや棚の上)を確保しておくのが安全策です。犬が興奮して吠えたり追いかけようとする場合は対面を中止し、もう少し時間をかけましょう。

相性には個体差が大きく、数日で仲良くなるケースもあれば数ヶ月かかるケースもあります。一般的には子犬と成猫、または子猫と成犬の組み合わせが馴染みやすいとされています。成犬と成猫の組み合わせは縄張り意識がぶつかりやすく、より慎重な導入が必要です。

食事の管理にも注意が必要です。犬と猫では必要な栄養バランスが異なり、犬が猫のフードを、猫が犬のフードを食べてしまう「盗み食い」は健康リスクにつながります。猫のフードは犬が届かない高い場所に置く、食事の時間帯を分ける、あるいは別室で食べさせるといった対策が求められます。

入居後に起きやすいトラブルと予防策

犬と猫の2種飼いでは、1種飼いとは異なるトラブルが発生します。入居前から対策を講じておくと退去時の費用も抑えられます。

騒音面では、犬が猫を追いかけて走り回る音や興奮して吠える声が最大の懸念です。床には厚手のジョイントマット(1畳分で2,000〜4,000円程度)を敷き、窓には防音カーテンを設置しておくと階下や隣室への音の伝わりを軽減できます。部屋全体に敷いても1〜2万円で済むため、費用対効果は高い対策です。

におい対策も欠かせません。犬と猫では体臭の種類が異なり、両方のにおいが混ざると室内に独特のにおいがこもりやすくなります。空気清浄機はリビングに1台、猫のトイレ付近にもう1台が理想的な配置です。猫のトイレは犬が触れない場所に設置してください。犬が猫のトイレの砂を食べてしまう事故は思った以上に多く、誤飲による腸閉塞など健康上の深刻なリスクにもなります。猫だけがアクセスできる高い場所か、犬が入れないゲートの向こう側に設置するのが安全です。

退去時の修繕費用を抑えるためには、壁紙保護シートと床の保護マットを入居初日から設置することが重要です。犬猫両方を飼っている場合の退去時修繕費用は1LDKで15〜25万円が相場(家賃2〜3ヶ月分程度)ですが、保護対策を徹底していれば5〜10万円に圧縮することも可能です。

まとめ

犬と猫を両方飼える賃貸は、ペット可物件のなかでもさらに限られた選択肢のなかから探すことになります。ポータルサイト・不動産会社・ペット共生型マンションの3つのルートを並行して活用し、交渉が必要な場面では敷金の上乗せや定期点検の受け入れといった具体的な条件を書面で提示することが成功率を高めます。初期費用は1匹飼いより5〜10万円上がるのが一般的なので、余裕をもった資金計画を立ててから物件探しに臨んでください。

物件探し全体の流れについてはペット可賃貸の探し方 完全ガイドにまとめています。多頭飼い全般の物件選びのコツは多頭飼いOKの賃貸物件の探し方も参考になります。

参考情報

  • 一般社団法人ペットフード協会「2024年(令和6年)全国犬猫飼育実態調査」(2024年12月公表)
  • 国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」(平成23年8月)
  • ペットホームウェブ 多頭飼育できるペット可物件特集(2025年閲覧)
  • 賃貸スタイルコラム「賃貸でペットの多頭飼いは可能?注意点や交渉のコツを解説」
  • Dear WAN Court「多頭飼いできる賃貸物件の探し方ガイド!交渉術から注意点まで解説」
  • 不動産ポータル各社(SUUMO・HOME’S・アットホーム)掲載データ(2025年時点)