遠方からの引越しや、仕事が忙しくて内見に行く時間が取れないとき、オンライン内見は頼りになる手段です。コロナ禍以降に普及が進み、2025年時点でオンライン内見を提供する不動産会社の割合は約6割に達しています。IT重説(ITを活用した重要事項説明)も2017年に解禁され、契約手続きまでオンラインで完結できる環境が整いつつあります。
ただし、ペット可物件ならではのチェックポイントは画面越しでは確認しにくい部分もあります。「何をオンラインで見て、何を現地に回すか」の線引きをあらかじめ決めておくと、物件探しの効率がぐっと上がります。
オンライン内見の4つの形式と選び方
不動産会社が提供するオンライン内見にはいくつかの形式があります。ペット可物件の確認に適した形式を選ぶことが、内見の精度を左右します。
| 形式 | 仕組み | メリット | デメリット | ペット可物件との相性 |
|---|---|---|---|---|
| ビデオ通話(リアルタイム) | 担当者が現地から映像を配信 | その場で質問・指示ができる | 通信環境に依存 | 最適 |
| 録画動画 | 事前に撮影した動画を視聴 | 何度も確認できる | リアルタイムの質問が不可 | 併用向き |
| VR内見 | 360度カメラで撮影した映像 | 部屋の全体像が掴みやすい | 細部が見えにくい | 補助的 |
| 写真+電話説明 | 物件写真を見ながら電話で説明 | 通信環境を選ばない | 臨場感に欠ける | 最低限 |
ペット可物件の内見なら、リアルタイムのビデオ通話が最も有効です。担当者にカメラを向けてほしい場所を指示できるため、気になる箇所を重点的に確認できます。Zoom、LINEビデオ通話、Google Meetなど使用ツールは不動産会社によって異なるので、事前に確認してアプリのインストールを済ませておきましょう。
VR内見は空間全体の把握には優れていますが、床材の質感や壁面の傷は判別しにくい面があります。VRで全体像を掴んでからビデオ通話で細部を確認する、という2段階の使い方ができれば理想的です。
画面越しで確認できるペット関連の7つのポイント
オンライン内見でも十分にチェックできる項目を整理します。事前にリスト化しておくと、内見中に聞き漏らす心配が減ります。
1. 間取りと広さ(ケージ・キャットタワーの配置)
部屋の広さや間取りはオンラインでも把握しやすい項目です。ケージやキャットタワーを置ける場所があるか、ペットの飼育スペースとして十分かを確認してください。
| ペットの大きさ | ケージの標準サイズ | 必要な床面積(周辺スペース含む) |
|---|---|---|
| 小型犬 | 60cm x 45cm | 約0.4平米 |
| 中型犬 | 90cm x 60cm | 約0.7平米 |
| 猫(トイレ+爪とぎ) | トイレ50cm x 40cm | 約0.5平米 |
6畳(約10平米)にベッドとデスクを置いた残りスペースにケージが収まるか、画面越しでもおおよその判断はできます。担当者にメジャーで壁の長さを測ってもらうよう依頼すると、家具の配置計画も立てやすくなります。
2. 床材の種類
フローリングかクッションフロアかは、画面越しでもある程度わかります。犬にとってフローリングは滑りやすく関節への負担が大きいため、床材の確認はペット飼育者にとって外せないチェック項目です。
担当者に床を軽く叩いてもらったり、近距離で撮影してもらうと質感が判別しやすくなります。クッションフロアはフローリングより柔らかく、叩いた音が鈍いのが特徴です。ペット対応のクッションフロアが敷かれている物件は、オーナーのペット飼育への理解度を推し量る材料にもなります。
床材の品番や仕様を担当者に確認してもらえると、退去時の原状回復費用のリスク見積もりにも役立ちます。
3. バルコニーの形状と脱走リスク
猫を飼う場合、バルコニーの柵は脱走防止の観点で非常に重要です。
| 柵の形状 | 脱走リスク | 確認ポイント |
|---|---|---|
| 縦桟タイプ | 比較的低い | 間隔が8cm以上あると成猫は通り抜けられる |
| 横桟タイプ | 高い | 猫が足をかけて登れる |
| パネルタイプ | 低い | 隙間の有無を確認 |
子猫なら5cm以上の間隔で通過できてしまうこともあります。これは画面越しでも判別しやすいポイントです。犬の場合はバルコニーの排水口の大きさも見ておきましょう。足を洗う際に排水口が詰まりやすい形状だと、水はけ問題の原因になります。
4. 共用部分の状態
エントランスや廊下、エレベーターの広さもオンラインで確認できます。大型犬を飼うならエレベーターの広さは気になるところです。標準的なマンションのエレベーターは奥行き120〜150cm、幅80〜100cm程度。大型犬(体長80〜120cm)がリードをつけた状態で入れるかどうかを確認してください。
自動ドアが二重になっているエントランスは、犬の飛び出し防止に有効です。共用廊下の幅が狭い物件では他の住人とすれ違う際にペットが接触するリスクがあるため、幅の広さも見ておくと安心です。
5. コンセントの位置と数
見落とされがちですが、コンセントの位置はペット飼育者にとって重要な確認項目です。脱臭機や空気清浄機を置く場所の電源が足りているか、ペットの手が届く低い位置(床から20cm以内)にコンセントがないかを画面越しに確認できます。
低い位置のコンセントは犬がコードをかじったり、猫がいたずらしたりする事故のリスクがあるため、コンセントカバーが必要になる箇所数を把握しておくと入居準備がスムーズです。
6. 窓の開閉方式と網戸の強度
猫の脱走防止には窓まわりの確認も欠かせません。引き違い窓は猫が前足でこじ開けるケースがあるため、ストッパーの取り付けが可能かどうかを担当者に聞いておくとよいでしょう。網戸のメッシュが細かいか、猫が体当たりしても外れにくい構造かも、画面越しである程度は確認できます。
7. ペット用設備の有無
物件によっては、ペット用足洗い場、ペット専用エントランス、ドッグラン併設といった設備が用意されているケースがあります。これらは画面越しでも確認可能ですし、備わっていれば物件のペット対応度の目安にもなります。
オンラインでは判断しにくい4つのポイント
画面越しでは限界がある項目もあります。ペット飼育者にとって影響が大きい順に整理しました。
1. 防音性能
防音性能はペット飼育者にとって最重要チェック項目のひとつですが、オンラインでは正確に判断できません。建物の構造で大まかに推測する形になります。
| 建物構造 | 防音性能 | ペット飼育の適性 |
|---|---|---|
| RC造(鉄筋コンクリート) | 高い | 犬の鳴き声が隣室に響きにくい |
| SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート) | 高い | RC造と同等 |
| 鉄骨造 | やや低い | 鳴き声が聞こえる可能性あり |
| 木造 | 低い | 鳴き声が隣室・上下階に響きやすい |
近年の新築木造は防音対策が施されている物件もあるため、築年数だけで判断するのは早計です。壁の厚さや遮音等級(D値・L値)を不動産会社に確認できるとよい判断材料になります。
ビデオ通話中に担当者へ壁を軽くノックしてもらい、音の響き方で壁の厚さをおおまかに推測する方法もあります。「コンコン」と軽い音なら壁が薄い可能性が高く、「トントン」と鈍い音ならある程度の厚みがあると考えられます。あくまで参考情報ですが、オンラインで得られる手がかりとしては有効です。
2. におい
前の入居者がペットを飼っていた場合、消臭処理が不十分だとにおいが残っていることがあります。オンラインではにおいの確認は当然不可能なので、不動産会社に以下を確認してください。
- 前の入居者がペットを飼っていたか
- 退去時に消臭クリーニングを行ったか
- クリーニングの内容(通常の清掃かオゾン脱臭まで行ったか)
前住人のにおいが残っている物件は、自分のペットにとってもストレス要因になり得ます。犬は嗅覚が人間の1,000〜10,000倍とされており、前の犬のにおいが残っていると落ち着かない行動を取ることがあります。
3. 散歩ルートと周辺環境
周辺環境はオンライン内見だけでは不十分ですが、別のツールで補完できます。
| 確認項目 | 活用するツール | チェックポイント |
|---|---|---|
| 散歩ルート | Google Mapストリートビュー | 歩道の幅、交通量、信号の有無 |
| 近隣の公園 | Google Map | 物件から半径500m以内に公園があるか |
| 動物病院 | Google Map+口コミ | 車で15分以内にあるか、夜間対応の有無 |
| 周辺の交通量 | Google Mapストリートビュー | 幹線道路の近さ、散歩に危険な交差点の有無 |
| ペットショップ | Google Map | 徒歩圏内にフードや用品を買える店があるか |
散歩ルートはGoogle Mapのストリートビューが便利ですが、撮影時期が古い場合もあります。画面右下に表示される撮影年月が3年以上前なら、周辺環境が変わっている可能性を考慮してください。
動物病院の距離は犬でも猫でも重要です。緊急時に連れて行ける距離にかかりつけ医がいるかどうかは、物件選びの大きな判断基準になります。夜間救急対応の病院が近くにあるかどうかも確認しておくと安心です。
4. 近隣住民のペット飼育状況
同じ建物に他のペット飼育者がいるかどうかは、住み心地に直結する情報です。すでにペットを飼っている住人がいる物件は、鳴き声やにおいへの許容度が比較的高い傾向があります。逆に、その建物で初めてのペット飼育者になる場合は、近隣トラブルのリスクが相対的に高くなります。不動産会社に聞けば教えてもらえることが多いため、ビデオ通話中に確認しておきましょう。
オンライン内見を成功させる3つのコツ
事前にチェックリストを共有する
内見の質は事前準備で8割決まります。確認したい項目をリストにまとめ、前日までに担当者へメールで送っておくのがベストです。
ペット飼育者向けのチェックリストに含めておきたい項目は以下のとおりです。
| カテゴリ | チェック項目 |
|---|---|
| 室内 | 床材の種類と状態、壁紙の傷やにおい、コンセントの位置と数、収納の奥行き |
| バルコニー | 柵の形状と隙間の幅、排水口の大きさ |
| 防音 | 隣室との壁の厚さ、上下階の構造 |
| ペット設備 | 足洗い場の有無、網戸の強度、窓の開閉方式 |
| 共用部 | エレベーターの広さ、エントランスの二重ドア |
| その他 | 前入居者のペット飼育歴、近隣のペット飼育世帯数 |
担当者がこのリストに沿って案内してくれるため、内見中に「あれも聞いておけばよかった」という後悔を減らせます。
パソコンの大画面で参加する
スマートフォンの小さな画面では、床材の質感や壁の傷を見逃しやすくなります。パソコンのモニター(13インチ以上)から参加するのがおすすめです。外付けモニター(21インチ以上)があればさらに快適です。担当者に撮影してもらった写真をその場で拡大表示すれば、壁紙の傷やコンセントの位置も確認しやすくなります。
録画と再内見を活用する
内見の録画を許可してもらえる場合は、必ず録画しておきましょう。後から見返すことで、内見中には気づかなかったポイントを発見できます。家族やパートナーと録画を共有して意見を聞くことも可能です。
同じ物件を異なる時間帯で2回内見するのも有効な方法です。日中と夕方では日当たりや騒音レベルが変わるため、ペットにとっての居住環境を多角的に判断できます。
オンライン内見と現地確認を組み合わせた効率的な進め方
オンライン内見だけで契約する人も増えていますが、ペット可物件の場合は可能であれば1回は現地を訪れたほうがよいです。防音性能やにおい、散歩環境は現地に行かないと正確には判断できません。
おすすめの進め方を段階ごとに整理しました。
| ステップ | 内容 | 件数の目安 |
|---|---|---|
| 1. ポータルサイトで候補選び | SUUMOとHOME’Sで条件検索 | 10〜20件 |
| 2. オンライン内見でスクリーニング | ビデオ通話で室内確認 | 3〜5件 |
| 3. 現地確認 | におい、防音、散歩ルートを確認 | 1〜2件 |
| 4. 契約 | 重要事項説明はIT重説で対応可 | 1件 |
すべての物件を現地で内見すると交通費と時間がかかりすぎるため、オンラインでのスクリーニングと現地確認を組み合わせるのが効率的です。
現地確認では、オンラインで判断できなかったにおい、壁を叩いた際の遮音感、窓を開けたときの外部騒音、散歩ルートの実際の歩きやすさを集中してチェックしてください。「ペットを連れて現地を見に行ってもよいか」を事前に不動産会社に確認し、可能であればペットの反応も見ておくとより確実です。
どうしても現地に行けない場合の対処法
遠方からの引越しでどうしても現地に行けない場合は、以下の方法で情報を補完します。
- Google Mapのストリートビューで散歩ルートと周辺環境を確認する
- 不動産会社に防音性能(建物構造、壁の厚さ)と前入居者のペット飼育歴を詳しく聞く
- 同じ物件の口コミをGoogle MapやSNSで検索する
- 契約前に短期解約の違約金の有無を確認しておく(万が一ペットに合わない環境だった場合の保険)
ペット可物件の探し方全体についてはペット可賃貸の探し方 完全ガイドで詳しくまとめています。物件を見つけた後の契約時の注意点はペット可賃貸の契約で見落としがちな7つの確認ポイントも参考にしてください。
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参考情報
オンライン内見の提供率(不動産会社の約6割)は不動産テック関連の業界調査(2025年時点)を参考にしています。IT重説の解禁は2017年の宅地建物取引業法の改正(国土交通省告示)に基づきます。犬の嗅覚の感度(人間の1,000〜10,000倍)はPets WebMDおよび獣医学の一般文献を参照しています。エレベーターの標準サイズ(奥行き120〜150cm、幅80〜100cm)は国土交通省のバリアフリー基準を参考にしています。柵の隙間と猫の通過可能性については、猫の身体寸法に関する獣医学的データを参照しました。