ペット可物件を探す際、間取りや家賃と同じくらい大切なのが建物の構造です。犬の鳴き声や走り回る音が近隣に響くかどうかは、建物がRC造(鉄筋コンクリート造)なのか木造なのかによって大きく変わります。

「RC造のほうが安心」という話はよく耳にしますが、RC造なら本当にペットの音は気にならないのか。木造だと飼育は厳しいのか。構造ごとの実際の防音性能を数値で確認しながら、ペットの種類に合った構造の選び方を考えてみます。

RC造と木造の基本スペック比較

賃貸物件で主に見かけるのは、RC造(鉄筋コンクリート造)、SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)、鉄骨造(S造)、木造の4つです。ペットとの暮らしに直接関わる項目で比較します。

比較項目RC造鉄骨造(S造)木造
壁の遮音性能(D値目安)D-50〜D-60D-40〜D-50D-35〜D-40
床の遮音性能(L値目安)L-50〜L-45L-55〜L-50L-60程度
家賃相場(同エリア比)基準RC造の8〜9割RC造の7〜8割
気密性高い中程度低い
法定耐用年数47年34年22年
ペット可物件の割合一定数あり一定数あり比較的多い

D値は壁の遮音性能を示す数値で、数字が大きいほど遮音性が高くなります。L値は床の遮音性能で、こちらは数字が小さいほど性能が良くなります。SRC造はRC造よりさらに防音性が高いものの、物件数が少なく家賃も高めです。この記事ではRC造と木造を中心に比較していきます。

防音性能の違いを数値で見る

ペットを飼ううえで最も気になるのが防音性です。構造による防音性能の違いは、D値(遮音等級)で把握できます。

構造D値の目安犬の吠え声(80〜90dB)が壁を通過した後聞こえ方
RC造D-50〜D-6025〜40dBささやき声〜静かな話し声程度
鉄骨造D-40〜D-5035〜50dB通常の話し声程度
木造D-35〜D-4045〜55dBはっきり聞こえるレベル

RC造はコンクリートの壁で仕切られているため、隣室や上下階への音漏れが少ないのが特徴です。犬が吠えたときの声(約80〜90dB)がRC造の壁を通過すると25〜40dB程度まで減衰し、隣室では一般的な話し声より小さいレベルになります。深夜帯でなければ苦情に発展しにくい水準です。

木造では同じ犬の吠え声が45〜55dBで隣室に伝わるため、日中であっても聞き取れる音量です。吠える頻度が多い犬の場合、近隣からの苦情に発展するリスクは高いと考えてください。

ただし、RC造であれば完全に音が遮断されるわけではありません。窓を開けていれば音は外に漏れますし、排水管や換気口を通じて音が伝わることもあります。また、同じRC造でも壁がコンクリートではなく石膏ボードで仕切られている物件があり、その場合は防音性能が木造とそれほど変わらないケースも。内見時に壁をノックして「コンコン」と軽い音がする場合は石膏ボードの可能性があります。

家賃の違いと年間コスト

構造の違いは家賃に直結します。同じエリア・同じ間取りで比較した場合、RC造は木造より2〜3割ほど家賃が高いのが一般的です。ペット可物件に限定すると、さらにペット飼育の敷金上乗せが加わります。

エリア・間取り木造の家賃目安RC造の家賃目安月額差年間差
東京23区・1K6〜8万円8〜11万円2〜3万円24〜36万円
東京23区・1LDK10〜13万円13〜17万円3〜4万円36〜48万円
大阪市内・1K4〜6万円6〜8万円2万円前後約24万円
大阪市内・1LDK7〜9万円9〜12万円2〜3万円24〜36万円
名古屋市内・1LDK6〜8万円8〜11万円2〜3万円24〜36万円
埼玉(川口・さいたま)・1LDK5.5〜7万円7〜9万円1.5〜2万円18〜24万円

月額で2〜3万円の差は年間にすると24〜36万円。5年間住めば120〜180万円の差額になります。防音性を取るか、家賃の安さを取るかは、ペットの鳴き声の大きさや生活スタイルによって判断が分かれるところです。

この差額をどう考えるかは、「木造に住んだ場合に別途かかるコスト」と比較すると見えてきます。木造で防音対策グッズを一通り揃えると3〜5万円。騒音トラブルで引越しを余儀なくされた場合の引越し費用は15〜30万円。トータルで見ると、RC造のほうが結果的に安く済むケースも少なくありません。

ペットの種類と建物構造の相性

犬と猫では音の出方が異なるため、構造との相性も変わります。

犬を飼う場合

犬は吠え声が大きく、室内で走り回ることも多いため、RC造のほうが安心して暮らせます。留守番中に吠える癖がある犬の場合、木造では近隣トラブルに発展するリスクが高いです。

犬種によっても事情は異なります。

犬種の分類吠え声の音量目安木造での飼育RC造での飼育
小型犬(チワワ、トイプードル等)70〜85dB対策次第で可能おおむね安心
中型犬(柴犬、コーギー等)80〜95dB苦情リスクあり対策併用で安心
大型犬(ラブラドール等)85〜100dBかなり厳しい対策は必要

鳴き声が少ない犬種やしつけが行き届いている場合は、木造でもトラブルなく暮らしているケースはあります。ただし犬は環境の変化やストレスで突然吠え始めることもあるため、「うちの犬は吠えないから大丈夫」と過信しないほうが安全です。

猫を飼う場合

猫は犬ほど大きな声を出さないため、木造でも比較的問題なく暮らせることが多いです。ただし猫特有の「運動会」(夜中に全力で部屋を駆け回る行動)は階下に響きやすく、特に木造の2階以上では苦情の原因になりえます。

発情期の鳴き声は木造だとかなり響くため、避妊・去勢手術を済ませておくことが事実上の前提です。手術費用はオスで10,000〜20,000円、メスで15,000〜30,000円程度。マンション飼育では必要経費と考えてください。

猫の場合、構造よりも「1階を選べるかどうか」のほうが影響が大きいかもしれません。1階であれば階下への足音を気にする必要がなく、脱走時のリスクも低減できます。

木造でもペットと暮らすための防音対策

家賃を抑えたい場合、木造のペット可物件を選んで防音対策でカバーするという選択もあります。完璧な防音は難しいものの、体感として「かなり静かになった」と感じるレベルまで改善することは可能です。

部屋の位置選びで差をつける

最上階の角部屋を選ぶと、隣接する部屋が少ないぶん騒音リスクを下げられます。最上階かつ角部屋であれば、接する住戸は1〜2戸にまで減ります。1階であれば階下への足音の心配がなくなり、犬の出入りも楽です。

防音グッズの効果と費用

対策費用目安遮音効果(D値改善)対象の音
防音カーテン7,000〜15,000円/窓+5〜8窓からの音漏れ
吸音パネル(壁用)1枚1,500〜3,000円+3〜5壁越しの音漏れ
厚手ジョイントマット1畳あたり2,000〜4,000円+5〜10足音・衝撃音
防音テープ(窓用)500〜1,000円/窓+2〜3すき間からの音漏れ
遮音カーペット(重ね敷き用)1畳あたり3,000〜5,000円+3〜5振動・衝撃音

これらを組み合わせるとD値で5〜10程度の改善が見込めます。木造のD-35がD-40〜45程度まで改善する計算で、鉄骨造に近い防音性能を確保できます。費用は6畳1部屋あたり2〜4万円程度です。

窓からの音漏れは意外と見落としやすいポイントです。壁の防音を強化しても、窓が開いていれば効果は半減します。夏場でも窓を閉めてエアコンで対応する前提で考えておいてください。

構造以外にチェックすべきポイント

建物の構造だけでなく、防音性を左右する要素は複数あります。内見時にあわせて確認しておくと、入居後のギャップを減らせます。

チェック項目確認方法注意点
壁の素材壁をノックして音を聞くコンコンと軽い音→石膏ボード。鈍い音→コンクリート
築年数物件情報で確認築30年以上と築10年未満では遮音材の品質に差がある
角部屋かどうか間取り図で確認隣接する住戸が少ないほど有利
窓の向き内見で確認幹線道路に面した部屋はペットの声が目立ちにくいメリットも
管理規約のペット条項管理会社に確認夜間(22時〜7時)の鳴き声に関する制約があるか

同じRC造でも築30年以上の物件と築10年未満の物件では、使われている遮音材や施工品質に差があります。内見時に壁をノックして確かめるだけでも、防音性能のおおまかな判断が可能です。

角部屋かどうか、隣室との壁の位置関係も判断材料になります。幹線道路に面した部屋は外部の騒音が大きい反面、ペットの鳴き声が目立ちにくいという逆のメリットもあります。

よくある質問

Q. 木造のペット可物件は騒音トラブルが起きやすいですか?

木造はRC造と比べて遮音性能が15〜20dB低く、犬の鳴き声が隣室に伝わりやすい構造です。ただし鳴き声のしつけができている小型犬や、完全室内飼いの猫であれば木造でもトラブルなく暮らせているケースは多くあります。絶対に避けるべきというわけではなく、ペットの種類と鳴き声の頻度で判断するのが現実的です。

Q. RC造の物件でも犬の足音(爪音)が下の階に聞こえますか?

聞こえる可能性があります。RC造が得意なのは壁を通じた空気音(鳴き声)の遮断であり、床への衝撃音(足音)については別の指標(L値)が重要です。床衝撃音はRC造でも完全には防げないため、犬と暮らす場合はジョイントマットやタイルカーペットで床を保護することが必要です。

Q. 軽量鉄骨造はRC造と木造の中間くらいの防音性能ですか?

概ねそのとおりです。軽量鉄骨造の遮音性能は壁D値で40〜50程度で、RC造(50〜60)より劣り木造(35〜40)より優れる位置づけです。犬の吠え声(80〜100dB)に対してはRC造ほどの遮音効果は期待できず、日常的に鳴く犬を飼う場合はRC造を優先するほうが安心です。

Q. RC造のペット可物件は家賃が高くて選択肢が少ないのですが、どう探せばいいですか?

月2〜3万円の家賃差が壁になる場合は、エリアの条件を緩めることが有効です。都心から電車で1〜2駅離れるだけでRC造でも家賃が大幅に下がるエリアがあります。また、築20年以上のRC造は築浅と比べて家賃が7〜8割程度のケースも多いため、築年数の条件を緩めて探す方法もあります。

Q. 内見のときに防音性能を自分で確かめる方法はありますか?

いくつか確認できる方法があります。①壁の真ん中あたりをノックして「コンコン」と響かず「ゴンゴン」と詰まった音がすれば壁が厚い、②廊下や隣室の音が室内でどれくらい聞こえるかを担当者と会話しながら確認する、③平日昼間と夜間帯で2回内見すると生活音のレベルが比較できます。

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参考情報

建物構造ごとの遮音性能(D値・L値)は日本建築学会の遮音性能基準およびピアリビング・楽待等の防音専門サイト(2026年4月確認)を参考にしています。防音グッズの遮音効果はメーカーの公表スペックおよび建築音響の一般的なデータに基づきます。家賃相場の比較はSUUMO・HOME’S等のポータルサイト掲載物件(東京23区・大阪市内・埼玉、2026年4月時点)を参照しました。

ペットと暮らすうえで、建物の構造は騒音トラブルの防止に直結します。犬を飼う場合はRC造を優先的に検討し、猫であれば木造でも対策次第で十分に暮らせます。

RC造にすると年間で24〜36万円の家賃差が生まれますが、防音対策グッズの購入費用や近隣トラブルによる引越しリスクを考えると、長期的にはRC造のコストパフォーマンスが高い場合もあります。物件選びの際は、構造だけでなく築年数や部屋の位置関係、管理規約の内容もあわせて、ペットの性格や生活スタイルと照らし合わせて判断してみてください。