猫のためにキャットウォークを壁に取りつけたい。犬が滑らないよう、フローリングを別の素材に張り替えたい。ペット可物件に住んでいても、「退去時に元に戻してください」と言われると手が止まってしまいます。改装したい気持ちと原状回復費用の不安が、いつもセットでついてくるからです。

ところが最近、「DIY可」「原状回復不要」を明示する物件が少しずつ増えてきました。築古物件のオーナーが空室対策として許可するケースに加え、UR賃貸住宅が制度化した「DIY住宅」もそのひとつ。ペット可と掛け合わせれば、愛犬や愛猫が本当に快適に暮らせる部屋を自分の手でつくれます。

「原状回復不要」の契約とは何か

通常の賃貸では、退去時に入居前の状態へ戻す義務(原状回復義務)が発生します。国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」によれば、通常の使用による経年劣化は貸主負担、借主の故意・過失による損傷は借主負担です。ペットによる傷やにおいは「通常使用を超える損耗」に分類されるため、修繕費は原則として借主が払います。

「原状回復不要」の物件は、この義務の一部または全部が免除される特約付きの契約形態です。改装した箇所を退去時にそのまま残して出ていけるため、ペット飼育者には大きなメリットがあります。

通常のペット可物件で退去時にかかる原状回復費用の相場は、ワンルームで7〜18万円、1LDK以上で15〜30万円。DIY可物件ならこの負担がゼロか大幅に軽減されるわけですから、長く住むほど経済的な恩恵が大きくなります。

ただし「何でも自由にできる」わけではありません。物件ごとに許可範囲が異なるため、契約前に書面で確認するのが前提条件です。

改装の種類許可されやすさペット飼育での活用例
壁紙の張り替え高い爪とぎに強いビニルクロスへ変更
壁へのビス打ち・棚の取りつけ高いキャットステップ、収納棚の設置
床材の上張り(既存床の上に敷く)やや高い滑り止めクッションフロアの施工
壁面の塗装物件による消臭・防汚効果のある塗料への塗り替え
床材の張り替え(既存床を剥がす)低いフロアタイルへの全面変更
間取り変更・水回りの改修ほぼ不可構造や配管に影響するため対象外

ペット飼育者がDIY可物件でできる改装

許可範囲のなかでも、犬猫の暮らしに直結する改装をいくつか紹介します。

床を滑りにくくする

犬がフローリングで滑って股関節を痛めるケースは珍しくありません。小型犬の膝蓋骨脱臼はフローリング生活との関連が疑われることが多く、大型犬ではさらに股関節形成不全のリスクも加わります。

DIY可物件なら、既存のフローリングの上にクッションフロアやフロアタイルを施工できます。

製品例価格帯(6畳あたり)特徴
東リ「ニュークリネスシート」約8,000〜12,000円ペット対応のクッションフロア。耐傷・消臭機能つき
サンゲツ「ペットと暮らす床」約10,000〜15,000円滑りにくさとクッション性を両立
タジマ「Pタイル」約12,000〜18,000円塩ビタイル。部分交換ができるので、汚れた箇所だけ差し替えられる
ジョイントマット(各社)約3,000〜6,000円最も手軽。ただし隙間に毛が入り込みやすい

専門業者に依頼すると6畳あたり3〜5万円の工賃がかかりますが、クッションフロアの上張りなら自分でも施工可能です。両面テープで固定するだけなので、DIY初心者でも半日あれば終わります。

フロアタイルの場合は1枚ずつ個別に交換できるのが利点です。犬が1枚だけ傷つけても、その部分だけ差し替えれば済みます。6畳間で36〜40枚ほど使うため、予備を5〜6枚買っておくと安心。

壁にキャットステップを設置する

猫の運動不足解消には、壁面に取りつけるキャットステップが効果的です。突っ張り式のキャットタワーと違い、壁にビスで固定するため安定感があり、体重5kg以上の猫でもしっかり使えます。

製品例価格帯設置方法
MYZOO「六角ハウス+ステップセット」約15,000〜25,000円壁にビス固定(3〜4点)
カインズ「猫用ウォールステップ」約2,000〜3,500円/1枚壁にビス固定(2点)
ディアウォール+自作棚板約5,000〜10,000円一式突っ張り式の柱に棚板を設置(壁に穴を開けない)
IKEA「LACK ウォールシェルフ」約1,500円/1枚壁にビス固定。耐荷重5kgで猫用に転用する人が多い

DIY可物件ならビス穴を気にしなくてよいので、リビングの壁面いっぱいにステップを配置して、床からエアコン上まで猫が登れる動線を組むことも可能です。市販のキャットタワー1台(15,000〜30,000円)を買うよりも、壁面を使ったほうが省スペースで自由度が高くなります。

設置間隔は猫の体格にもよりますが、30〜40cm刻みが目安です。体重6kg以上の猫なら、ステップ1枚あたりの耐荷重が10kg以上ある製品を選んでください。安価な製品は耐荷重3〜5kgのものがあり、猫がジャンプした衝撃で外れる危険があります。

壁紙を爪とぎに強い素材へ変更する

猫との暮らしで最もダメージを受けやすいのが壁紙です。通常のビニルクロスは猫の爪で簡単にボロボロになり、退去費用が高額になる大きな要因になっています。6畳の壁面4面を全面張り替えすると4〜7万円に達することも。

DIY可物件なら、壁紙そのものを耐傷性の高いクロスに変えられます。

壁紙の種類価格帯(6畳・壁面)耐傷性
サンゲツ「スーパー耐久性」約8,000〜12,000円通常クロスの約3倍の引っかき強度
リリカラ「ペットにやさしいクロス」約7,000〜10,000円表面強化+消臭機能つき
通常のビニルクロス約5,000〜8,000円猫の爪ですぐに傷がつく

コスト差は6畳あたり3,000〜4,000円程度なので、猫を飼っているならこの差額は十分に元が取れます。自分で施工する場合はのり付き壁紙を選べば初心者でも貼れますが、仕上がりにこだわるなら業者への依頼がおすすめです。業者の場合、工賃は6畳で4〜6万円程度。

改装費用のシミュレーション

ペット飼育者がDIY可物件で行う代表的な改装と費用を、自分で施工した場合と業者に依頼した場合で比較します。

改装内容DIYの場合業者施工の場合
クッションフロアの上張り(6畳)8,000〜15,000円3〜5万円
壁紙の張り替え(6畳・壁面)7,000〜12,000円+道具代約2,000円4〜6万円
キャットステップ設置(5〜6枚)10,000〜20,000円+下地探し代約1,000円2〜3万円
腰壁パネルの設置(リビング1面)5,000〜10,000円2〜3万円
脱走防止フェンス(玄関1箇所)5,000〜15,000円DIY前提の製品が多い

6畳1Kで床・壁・キャットステップをすべて自分で施工した場合、3〜5万円程度に収まります。同じ内容を業者に頼むと10〜15万円ほど。

通常のペット可物件で同様の改装をして退去時に原状回復する場合、さらに復旧費用が5〜15万円上乗せされます。DIY可物件ならこの復旧費用がゼロです。3年間住む想定で比較すると、DIY可物件のほうが10〜25万円安くなる計算になります。

DIY可物件を効率よく見つける3つの方法

ペット可とDIY可の両方を満たす物件はまだ数が限られています。SUUMOやHOME’Sで「ペット可」「DIY可」を掛け合わせると、検索結果が極端に少なくなるのが現状です。

DIY特化型のポータルサイトを使う

DIY可物件を専門に扱うサイトなら、そもそもDIY可が前提で物件が掲載されているため、そこからペット可で絞り込むほうが早いです。

サイト名特徴ペット可の探しやすさ
DIYP(ディーアイワイピー)DIY可賃貸の専門サイト。改装事例の写真も豊富ペット可の絞り込みあり
goodroomリノベ物件が多く、DIY可・ペット可の絞り込みに対応条件検索に対応。物件数はやや少なめ
R-STOREデザイナーズ物件中心。カスタマイズ可の物件を掲載個別問い合わせが必要な場合あり

DIYPは「ビフォーアフター事例」が充実しているため、自分の部屋でどんな改装ができるかイメージを膨らませるのにも役立ちます。

UR賃貸住宅の「DIY住宅」を狙う

UR賃貸住宅(旧公団住宅)には、特定の物件を対象にした「DIY住宅」制度があります。壁紙の変更や棚の取りつけが原状回復不要で認められ、礼金・仲介手数料・更新料がかからないのも特徴です。

種類原状回復改装範囲家賃
DIY住宅(通常型)申請した改装箇所は不要壁紙・床材・収納の造作など通常と同額
カスタマイズUR不要内装全般を自由に改装可割安な場合あり
セルフリノベ住宅不要内装がスケルトン状態で引き渡し大幅に割安(通常家賃の5〜7割程度)

東京都内だけでも約50団地でペット飼育が認められています(2025年時点、UR都市機構公式サイト情報)。UR公式サイトで「ペット可」「DIY住宅」の両方にチェックを入れて検索してみてください。

セルフリノベ住宅は家賃が大幅に安い反面、入居時点では内装がほぼスケルトン状態。床・壁・天井をすべて自分で仕上げるため、DIY経験者向けです。ペット仕様の内装を一からつくれるという意味では、理想的な選択肢ではあります。

築古物件のオーナーに交渉する

築20年以上で空室が続いている物件なら、大家さんが入居促進のためにDIYを許可してくれることがあります。不動産会社を通じて「ペット飼育に必要な改装を自費で行いたい。退去時に原状回復不要にしてもらえないか」と交渉するのが現実的です。

交渉が通りやすい物件には傾向があります。築25年以上で空室が3ヶ月以上続いている物件。駅から徒歩15分以上でほかの条件面でも苦戦している物件。個人オーナーの物件(管理会社が決裁権を持つ大手管理物件は交渉が通りにくい)。

「自費で改装し、退去時にそのまま残す」という提案は、大家さんにとってもリフォーム費用をかけずに物件価値が上がるメリットがあるため、受け入れられやすい交渉材料です。改装内容の書面提出と承認取得をセットで提案すると、大家さん側の安心感も高まります。

契約前に押さえておく法的なポイント

DIY可物件でも、トラブルを防ぐために契約段階でいくつか確認が必要です。

許可範囲の書面化

口頭での「好きにしていいですよ」は法的に証拠として弱いです。許可される改装の範囲、使用できる材料や工法の制限、原状回復が不要な箇所と必要な箇所の区別を、契約書の特約条項か別紙で明記してもらいましょう。

国土交通省が公表している「DIY型賃貸借に関する契約書式例」が参考になります。改装内容の申請書や承認書のひな形が含まれており、合意内容を書面に残す標準フォーマットとして使えます。国交省のWebサイトから無料でダウンロード可能です。

施工前の申請と構造上の注意

改装着手前に大家さんまたは管理会社への事前申請が必要な物件がほとんどです。改装内容の図面や使用材料のカタログを添えて申請し、書面で承認を得てから工事に入るのが安全な手順。無断で改装すると、DIY可物件であっても契約違反を問われる可能性があります。

壁を壊す、柱を削る、配管を移動させるといった工事は、DIY可であっても行ってはいけません。建物の構造に関わる改修は建築基準法や消防法に抵触する恐れがあり、損害賠償責任を負うリスクがあります。

キャットウォークを設置する場合も、壁の裏に間柱があるかどうかを下地探しで確認してから施工してください。石膏ボードだけにビスを打つと、猫が乗った衝撃で棚ごと落下する危険があります。下地探しの道具はホームセンターで1,000〜2,000円程度です。

退去時の条件確認

「原状回復不要」の範囲を入居前に明確にしておくと、退去時の「言った・言わない」を防げます。改装箇所はすべて残して退去してよいのか、一部は元に戻す必要があるのか。DIYで設置した設備の所有権は退去後どうなるのか。改装が原因で生じた損傷(ビス穴周囲のひび割れなど)の修繕費用はどちらが負担するのか。これらを契約書の特約に盛り込んでおくことが、トラブル防止の鍵になります。

ペット可物件の退去費用について詳しくはペット可賃貸の原状回復ガイドで解説しています。DIY可物件と通常物件の費用差を把握したうえで、物件探しの判断材料にしてみてください。

物件探し全体の流れはペット可賃貸の探し方 完全ガイドにまとめています。DIY可物件に限らず、ペット可物件を効率よく見つけるコツも掲載しているので、あわせて参考にしてください。

関連記事: 賃貸でもできるキャットウォークDIY。設計のコツと原状回復OKな設置方法