猫は高いところが好きな動物です。野生の猫は木の上で外敵を見張りながら休息する習性があり、室内飼いの猫にも「高い場所から部屋を見渡したい」という本能が残っています。キャットウォークを設置すると、この本能を満たしながら運動不足の解消やストレス軽減にもつながります。
賃貸物件では壁にビス穴を開けられないため、設置方法に工夫が必要です。ディアウォールやラブリコといった突っ張り式のDIYパーツを使えば、壁を傷つけずにキャットウォークを作れます。退去時に撤去すれば原状回復も問題ありません。市販のキャットタワーと違い、壁面を活用するため床面積を取らないのも、賃貸の限られたスペースでは大きなメリットです。
キャットウォークのメリット
キャットタワーとキャットウォークには、それぞれ異なる特徴があります。
| 項目 | キャットウォーク(壁面DIY) | キャットタワー(市販品) |
|---|---|---|
| 床面積 | ほぼゼロ(壁面を活用) | 60cm四方〜の設置スペースが必要 |
| カスタマイズ性 | 高い(配置・高さ・幅を自由に設計) | 低い(固定されたデザイン) |
| 運動量 | 水平移動+上下移動で高い | 上下移動が中心 |
| 多頭飼い対応 | 棚板を増やすだけ | 追加台数の購入が必要 |
| 費用 | 5,000〜15,000円 | 10,000〜30,000円 |
| デザイン | 部屋に合わせられる | 製品による |
| 原状回復 | 突っ張り式なら問題なし | 問題なし |
特に1K〜1LDKの賃貸では床面積の制約が大きいため、壁面を活用するキャットウォークのほうが空間を有効に使えます。多頭飼いの場合も、棚板を増やすだけでルートを拡張できる柔軟性は、市販のキャットタワーにはない利点です。
必要な材料とコスト
キャットウォークDIYに必要な材料は、ホームセンターで一式揃います。
| 材料 | 個数の目安 | 参考価格 | 購入先 |
|---|---|---|---|
| 2x4材(ツーバイフォー材) | 2〜4本 | 1本 500〜1,000円 | ホームセンター |
| ラブリコ or ディアウォール | 2x4材と同数 | 1個 900〜1,200円 | ホームセンター、Amazon |
| 棚板(幅25〜30cm) | 3〜5枚 | 1枚 500〜1,500円 | ホームセンター |
| 棚受け金具(L字) | 棚板の枚数x2個 | 1セット 300〜500円 | ホームセンター |
| 滑り止めシート | 適量 | 500円程度 | 100均、ホームセンター |
| ネジ・ビス | 適量 | 300円程度 | ホームセンター |
| 当て板(天井保護用) | 柱と同数 | 端材でOK | ホームセンターで端材購入 |
| 合計 | — | 5,000〜15,000円 | — |
2x4材のカットはホームセンターで購入時にお願いできるため、自宅でのこぎりを使う必要はありません。カット代は1回10〜50円程度で、ミリ単位の精度で切ってもらえます。
ディアウォールとラブリコの比較
突っ張りパーツは2大ブランドがあり、それぞれ特徴が異なります。
| 項目 | ディアウォール | ラブリコ |
|---|---|---|
| 固定方式 | バネ式(押し込んで設置) | ネジ式(ジャッキで締め付け) |
| 2x4材のカット長 | 天井高マイナス45mm | 天井高マイナス95mm |
| 耐荷重 | やや低め | やや高め |
| 設置の手軽さ | 簡単(はめ込むだけ) | やや手間(ネジを回す必要あり) |
| 安定性 | 普通 | 高い(増し締めできる) |
| 経年劣化 | バネが緩む可能性あり | ネジ式のため緩みにくい |
| 価格帯 | 900〜1,000円/個 | 1,000〜1,200円/個 |
猫が飛び乗る衝撃は体重の2〜3倍に達するため、安定性が重要です。ネジ式で増し締めが可能なラブリコのほうが安全性の面で優れています。設置後に定期的に締め直すこともできるため、長期間使う前提であればラブリコが推奨です。
ディアウォールは設置が手軽で、初めてDIYをする方には取り組みやすい製品です。猫1匹であれば問題なく使えますが、多頭飼いの場合はラブリコを選んだほうが安心です。
設計のポイント(寸法と配置)
キャットウォークの設計で押さえるべき寸法を整理します。猫が安全に使えるかどうかは、この数値がカギになります。
| 項目 | 推奨寸法 | 理由 |
|---|---|---|
| 棚板の幅 | 25〜30cm | 猫が歩くのに十分な幅。20cm未満だと不安定 |
| 棚板の奥行き | 25〜30cm | 座ったりくつろいだりするのに必要なスペース |
| 棚板の段差(高さ間隔) | 30〜40cm | 成猫が無理なくジャンプできる距離 |
| シニア猫の場合の段差 | 20〜25cm | 関節に配慮した低めの設定 |
| 柱の間隔 | 60〜90cm | 棚板の長さに合わせる |
| 棚板の耐荷重 | 10kg以上 | 成猫の体重(3〜6kg)+ジャンプ衝撃(体重の2〜3倍) |
| すれ違い用の幅 | 35cm以上 | 多頭飼いで猫がすれ違えるようにする場合 |
棚板の間隔が40cmを超えると、シニア猫や短足の猫種(マンチカンなど)はジャンプしにくくなります。一方で30cm未満にすると、大きめの猫が移動しにくくなるため、30〜40cmの範囲で調整するのが基本です。
多頭飼いの場合は、行き止まりを作らないよう「回遊できるルート」を設計することが重要です。行き止まりがあると、1匹が詰めたときに他の猫が通れなくなり、ストレスの原因になります。
設置の手順
ステップ1: 天井の高さを正確に測る
メジャーで天井までの高さを計測します。必ず設置予定の場所で測ってください。同じ部屋でも場所によって天井高が数ミリ異なることがあり、この誤差がグラつきの原因になります。
ディアウォールの場合は天井高マイナス45mm、ラブリコの場合は天井高マイナス95mmの長さに2x4材をカットします。
ステップ2: 柱を立てる
2x4材にディアウォールまたはラブリコを取り付け、壁際に垂直に立てます。設置前に天井側に当て板(合板の小片)を挟んでおくと、天井の凹み防止と安定性の向上を同時に実現できます。
柱が垂直かどうかは、スマートフォンの水平器アプリで確認できます。わずかな傾きでも猫が乗ったときにグラつく原因になるため、この工程は丁寧に行ってください。
ステップ3: 棚板を取り付ける
立てた柱に棚受け金具をネジで固定し、棚板を載せます。柱に直接ネジを打つのは問題ありません。退去時に柱ごと撤去するため、壁には一切穴が残りません。
棚板の配置パターンは大きく2つあります。
| 配置パターン | 特徴 | 向いている猫 |
|---|---|---|
| 階段式(左右交互) | 省スペース。柱2本でも設置可能 | 活発な若い猫 |
| ジグザグ式(千鳥配置) | 水平移動と上下移動を組み合わせられる | 運動量を増やしたい猫 |
最上段には猫が座れる広めの棚板(幅35cm以上)を設置すると、お気に入りのくつろぎスペースになります。窓の近くに設置する場合は、最上段から外が見える高さに合わせると猫の満足度が上がります。
ステップ4: 安全対策
棚板の上面に滑り止めシートを貼り、猫が着地した際に滑らないようにします。カーペット生地を貼ると爪とぎとしても使えて一石二鳥です。
棚板の側面や角にぶつかったときのケガを防ぐため、角を紙やすり(#120〜180番)で丸めておくと安全性が高まります。
設置後は必ず自分の手で棚板を強く押してみて、グラつきがないか確認してください。猫のジャンプ着地は体重の2〜3倍の衝撃がかかるため、手で揺すってビクともしない状態が合格ラインです。
設置場所の選び方
| 設置場所 | メリット | 注意点 |
|---|---|---|
| リビングの壁面 | 家族の様子を見下ろせて猫の満足度が高い | 家具との干渉に注意 |
| 窓の近く | 外を眺められる人気スポットになる | 脱走防止対策とセットで考える |
| テレビ横の壁面 | テレビ台から最初のステップに移動しやすい | テレビに飛び乗らないよう動線を設計 |
| 寝室の壁面 | 猫と一緒の空間で就寝できる | 夜間の運動音が気になる場合は避ける |
窓が開く位置のすぐそばに設置する場合は、脱走防止対策を必ずセットで行ってください。エアコンの風が直接当たる場所は、猫が長時間過ごす場所としては不向きです。
市販品を活用する方法
すべてDIYで作らなくても、市販のキャットウォークパーツを組み合わせる方法もあります。
突っ張り式のキャットウォーク専用パーツは、棚受け金具と棚板が一体化した状態で販売されています。2x4材に取り付けるだけで完成するため、棚受け金具の取り付け位置を自分で決める必要がなく、DIY初心者でも失敗しにくいのが利点です。価格は1セット(棚板1枚分)で2,000〜4,000円程度と、自分で材料を揃えるよりは割高になりますが、作業時間と仕上がりの安定感で考えると十分に選択肢に入ります。
壁に直接取り付けるタイプのキャットステップ(ピン固定式)も存在します。石膏ボード用の細いピンで固定する方式で、外した後のピン穴は通常の画鋲程度の大きさです。国土交通省のガイドラインでは、画鋲・ピン程度の穴は通常の使用範囲とされており、原状回復費用が発生しないケースが大半です。
多頭飼い向けの設計のコツ
猫を2匹以上飼っている場合は、キャットウォークの設計に追加の配慮が必要です。
行き止まりのない「回遊ルート」を作ることが最も重要なポイントです。A地点からB地点への一方通行ではなく、ぐるりと回れるルートにすることで、猫同士が鉢合わせても逃げ道が確保されます。
棚板は猫の頭数+1枚程度の余裕を持たせると、全頭が同時にキャットウォーク上にいても居場所の取り合いになりにくくなります。階段状の配置に加え、横方向の移動ルートも確保すると、遊びのバリエーションが広がります。
退去時の注意点
ディアウォールやラブリコは、天井と床に突っ張っているだけなので、取り外せば跡は基本的に残りません。ただし長期間(1年以上)設置していると、天井に若干の凹みや変色が生じることがあります。
設置時に天井側に当て板(5cm四方の合板など)を挟んでおけば、凹みのリスクを大幅に軽減できます。当て板は100円前後で入手でき、見た目も気にならないため、最初から挟んでおくことを強く推奨します。
壁自体にはネジ穴や傷は一切つかないため、一般的な原状回復の範囲で問題になることはほぼありません。念のため、設置前と撤去後の写真を撮っておくと、退去時のトラブル防止になります。
参考情報
記事内の製品情報・価格は各メーカー公式サイトおよび主要ECサイトの掲載価格(2026年4月確認)を参考にしています。住宅管理に関する情報は国土交通省ガイドラインおよび不動産管理の一般的な知見に基づいています。
まとめ
賃貸でもキャットウォークのDIYは十分に実現可能です。ラブリコやディアウォールを使えば壁を傷つけず、退去時の原状回復も問題ありません。材料費は5,000〜15,000円程度で、ホームセンターで購入時にカットまでお願いすれば、自宅では組み立てるだけで完成します。
設計のポイントは、棚板の幅25〜30cm、段差30〜40cm、耐荷重10kg以上の3点を守ることです。多頭飼いの場合は行き止まりのない回遊ルートを意識して設計してください。
猫の運動不足やストレスが気になっている方は、まずは柱2本と棚板3枚のミニマルな構成から始めてみてください。猫がキャットウォークに乗って部屋を見渡している姿を見ると、作った甲斐を感じられるはずです。
DIYの跡が退去時にどう扱われるか気になる方は、原状回復のルールを事前に確認しておきましょう。
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