賃貸で猫を飼い始めたいと考えたとき、物件探しと事前準備の両方をしっかり押さえておく必要があります。飼い始めてから「この物件ではペット不可だった」「退去時の費用が想定外だった」と後悔するケースは少なくありません。

猫は完全室内飼いが基本であり、散歩の必要もないことから犬に比べると賃貸での飼育ハードルは低めです。ただし、爪とぎによる壁の損傷やトイレのにおい問題など、猫特有の注意点も存在します。この記事では、賃貸で猫を迎える前に確認しておくべきことを物件選び・費用・室内準備・契約の4つの軸で整理しました。

猫を迎えるなら物件選びが最優先

猫を迎えたい気持ちが先行しがちですが、住む場所の確保が最優先です。ペット不可の物件で内緒に飼育すると、発覚時に違約金10〜20万円を請求されたり、強制退去を求められたりするリスクがあります。ペット不可物件の契約違反は「信頼関係の破壊」に該当し、契約解除の正当な理由として裁判でも認められるため、「バレなければ大丈夫」という考えは通用しません。

ペット可物件の種類を理解する

ペット可物件には「最初からペットOK」の物件と「交渉次第でOK」の物件、さらに「ペットとの暮らしを前提に設計された共生型」の3種類があります。

種別特徴猫の受け入れ家賃の目安(東京23区・1LDK)
ペット可募集条件にペット可と明記受け入れ前提だが種類・頭数に条件あり9〜13万円
ペット相談可大家さんとの交渉で決まる猫は犬より交渉が通りやすい傾向8〜12万円
ペット共生型ペットとの暮らしを前提に設計猫用のキャットウォークやくぐり戸を備えた物件も11〜16万円
ペット不可ペット飼育禁止交渉は難しい。別の物件を探すべき7〜11万円

猫の場合、完全室内飼いで散歩の必要がなく、鳴き声も犬に比べて小さいため、「ペット相談可」の物件では受け入れてもらえるケースが比較的多めです。交渉時には猫の年齢、体重、避妊・去勢手術の実施状況、爪とぎ対策の計画を伝えると、大家さんの不安を和らげやすくなります。

猫向きの物件条件

猫と快適に暮らすには、間取りだけでなく建物の構造や周辺環境も考慮する必要があります。以下の条件を意識して物件を選ぶと、入居後のトラブルが減ります。

条件理由内見時のチェック方法
RC造・SRC造防音性が高く、猫が走り回る音が階下に響きにくい物件情報の構造欄を確認。壁を叩いて響き方をチェック
1LDK以上(30平米〜)猫のトイレスペースと生活空間を分けられる間取り図でトイレの設置場所を想定する
窓が多い・日当たりがよい猫は日向ぼっこを好む。窓辺に猫の居場所をつくれる午前中に内見して日当たりを確認する
脱走防止がしやすい間取りバルコニーや窓からの脱走を防ぎやすい構造サッシの形状、バルコニーの柵の高さと隙間を確認
壁がクロス貼り爪とぎ損傷が起きやすいが、退去時の張り替え費用が塗り壁より安い壁の素材を目視で確認。不動産会社に聞く
近隣に動物病院がある急な体調不良やワクチン接種に対応できる物件から徒歩・車で10分以内にあるか確認

ワンルームでも猫1匹であれば十分に暮らせますが、トイレの置き場所に困ることがあります。猫のトイレは「猫の体長×1.5倍」のスペースが目安です。キッチンとの仕切りがあるか、トイレを置いても動線が確保できるかを内見時に確認しておきましょう。

猫の飼育にかかる初期費用の内訳

猫を迎えるにあたっては、物件の初期費用とは別に飼育関連の費用がかかります。両方が同時に発生するため、トータルの金額を事前に把握しておかないと予算が足りなくなるリスクがあります。

猫を迎えるための費用

項目費用目安補足
猫の購入費 or 譲渡費0〜30万円ペットショップ15〜30万円、ブリーダー10〜25万円、保護猫は医療費実費のみ(1〜3万円)
ワクチン接種(3種混合)5,000〜8,000円初年度は2回接種が推奨。2回目は3〜4週間後
避妊・去勢手術15,000〜30,000円メスの避妊手術のほうが費用が高い傾向
マイクロチップ装着5,000〜10,000円2022年6月より販売業者は装着を義務化。保護猫は装着済みの場合あり
トイレ本体+猫砂3,000〜5,000円システムトイレが手入れしやすくておすすめ
フードボウル・水入れ1,000〜3,000円自動給水器を導入するなら3,000〜5,000円
キャリーバッグ3,000〜8,000円通院・災害時に必須。ハードタイプが安定する
爪とぎ500〜2,000円段ボール製がコスパよい。複数箇所に設置が理想
猫用ベッド・毛布2,000〜5,000円季節に合った素材を選ぶ

保護猫を迎える場合は購入費がかからない代わりに、譲渡時の医療費負担(ワクチン・不妊手術・マイクロチップの実費)として1〜3万円ほど求められることが一般的です。保護猫の譲渡にかかる費用は団体ごとに異なるため、事前に確認してください。

猫を迎える費用だけで合計すると、ペットショップからの購入で20〜40万円程度、保護猫を迎える場合で3〜8万円程度が目安です。

賃貸契約の初期費用(ペット可物件)

ペット可物件では通常の賃貸契約に加えて、敷金が1ヶ月分上乗せされるケースが大半です。

項目一般的な相場備考
敷金家賃2ヶ月分通常1ヶ月+ペット上乗せ1ヶ月が一般的
礼金家賃0〜1ヶ月分礼金なしの物件も増えてきている
仲介手数料家賃0.5〜1ヶ月分不動産会社によって異なる。上限は家賃1ヶ月分+税
前家賃家賃1ヶ月分入居月の翌月分
火災保険料15,000〜25,000円/年ペット飼育で保険料が上がることは通常ない

家賃7万円の物件に猫と入居する場合で計算すると、敷金14万円+礼金7万円+仲介手数料7.7万円+前家賃7万円+火災保険2万円で合計約37.7万円です。ここに猫の飼育初期費用が加わるため、保護猫を迎えるケースで40〜46万円、ペットショップから購入するケースで55〜70万円が目安になります。

入居前に済ませておく室内の準備

物件が決まったら、猫を迎える前に室内の環境を整えておきます。入居後に慌てて対策するよりも、引越し当日までにまとめて準備するほうが効率的で、猫にとってもストレスの少ない環境をつくれます。

脱走防止対策

猫の脱走は賃貸で最も気をつけたいトラブルです。一度外に出てしまうと見つからないケースも多く、室内飼いの猫は外の環境に適応できないため命に関わります。入居直後、猫を迎える前に対策を完了させてください。

窓には突っ張り棒タイプの脱走防止柵を設置するのが手軽です。ホームセンターのワイヤーネットと突っ張り棒を組み合わせれば2,000円以内で自作できます。100均の材料でも十分な強度が出ます。玄関にはのれん状の仕切りを設置し、ドアを開けた瞬間に猫が飛び出すのを防ぎます。

ベランダの柵に隙間がある場合は、結束バンドでメッシュパネルを取り付けると隙間を塞げます。賃貸の場合は退去時に原状復帰できる方法を選んでください。

爪とぎ対策

壁や柱への爪とぎは、退去時の原状回復費用に直結します。壁紙の張り替えは1Kの部屋で4〜6万円、柱の補修で1〜3万円かかるため、入居時の予防が経済的にも合理的です。

猫が爪を研ぎやすい場所(柱の角、壁の出っ張り部分、家具の脚元)には保護シートを貼っておきましょう。透明タイプの保護シートなら見た目を損なわず、退去時にきれいに剥がせる製品も多いです。段ボール製の爪とぎを複数箇所に設置しておくと壁への被害を軽減できます。猫は同じ場所で爪を研ぐ習性があるため、お気に入りの爪とぎができれば壁に向かう頻度は自然と減ります。

床の保護

フローリングは猫の爪で傷がつきやすく、走り回る際に滑って関節を痛めるリスクもあります。猫がよく活動するエリアにはタイルカーペットやジョイントマットを敷いておくのが効果的です。30cm角のタイルカーペットなら1枚200〜500円程度で、汚れた箇所だけ交換できるのが利点です。

撥水性のある素材を選べば、毛玉を吐いた場合の掃除も楽になります。ペット対応のクッションフロアは、滑りにくさと傷つきにくさを両立した素材で、ホームセンターで1畳あたり1,500〜3,000円で購入できます。

においの管理

猫のトイレのにおいは放置すると壁紙に染みつき、退去時のクリーニング費用が高額になります。トイレの設置場所は換気しやすい場所(窓の近く、換気扇のある洗面所など)を選んでください。

猫砂の交換頻度は最低でも1日1回、排泄物の除去はその都度が理想です。システムトイレを使う場合でもシートの交換は週1回が目安になります。においが気になる場合は、ペット用の空気清浄機を導入すると効果があります。消臭効果のある猫砂(ひのき系、おから系など)を選ぶのも有効な手段です。

猫に危険なものを片づける

室内飼いの猫は好奇心が旺盛で、人間にとっては無害でも猫には命に関わるものが家の中に意外と多い。猫を迎える前に以下のリストを確認し、手の届かない場所に移動させておこう。

カテゴリ具体的なもの猫への危険性
観葉植物ユリ科(ユリ・チューリップ)、ポトス、アイビーユリは花粉を舐めただけでも腎不全を起こし致死率が高い
スイセン、シクラメン、アジサイ嘔吐・下痢・痙攣を引き起こす
食品チョコレート、玉ねぎ・ネギ類、ブドウ・レーズン溶血性貧血、中毒症状
日用品アロマオイル(ティーツリー等)、防虫剤、漂白剤猫は精油の代謝能力が低く中毒になりやすい
小物輪ゴム、ヘアゴム、ひも状のもの誤飲すると腸閉塞の危険。開腹手術で10万〜30万円

アロマディフューザーは猫がいる部屋では使用を避けるべきだ。ティーツリーやペパーミントなど猫に有害な精油は多く、揮発した成分を吸い込むだけでも体調を崩すことがある。

ひも状のおもちゃで遊ばせた後は必ず片づけること。猫がひもを飲み込むと腸に絡まり、開腹手術が必要になるケースがある。裁縫道具や毛糸は蓋つきの収納に入れておくのが安全だ。

契約前に確認すべきポイント

ペット可物件であっても、契約内容は物件ごとに大きく異なります。入居後のトラブルを防ぐために、署名前に以下の項目を必ず確認してください。

確認事項確認する理由よくあるトラブル
飼育可能なペットの種類と頭数「犬のみ可」で猫は不可の場合がある。「小動物のみ」の物件も存在する2匹目を迎えたいとき、追加の承認が必要になるケースがある
敷金の上乗せ額と返還条件ペット飼育分の敷金が「預り金」か「償却」かで退去時の負担が変わる「敷金2ヶ月分」の内訳を確認しないまま契約し、退去時に想定外の費用が発生
退去時の原状回復の範囲猫の爪とぎ跡は「通常使用による損耗」に該当しないため借主負担になる壁紙の全面張り替え費用を請求されたが、一部のみの損傷だった
ペット飼育に関する特約事項「室内のみ飼育」「共用部ではキャリーに入れる」等のルールルールを知らず共用廊下を猫が歩いてしまい、他の入居者から苦情
ペット飼育届出書の有無契約とは別に管理会社へ届け出る書類が必要な場合がある届出をしないまま飼育し、契約違反を指摘される

特に原状回復の条件は退去費用に直結します。国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、ペットによる傷や汚れは「通常の使用による損耗」には含まれず、借主の負担とされています。入居時に室内の写真を撮影しておくことで、もともとあった傷との区別ができるようにしておきましょう。日付入りの写真を20〜30枚ほど撮っておくのが目安です。

月々の飼育費用も把握しておく

初期費用だけでなく、猫を飼い続けるための月々のランニングコストも事前に確認しておきたいところです。

項目月額の目安年額換算
フード3,000〜5,000円36,000〜60,000円
猫砂・トイレ用品1,000〜2,000円12,000〜24,000円
ペット保険1,500〜3,500円18,000〜42,000円
ワクチン(年1回)5,000〜8,000円
ノミ・ダニ予防薬800〜1,500円9,600〜18,000円
合計約6,300〜12,000円約80,000〜152,000円

年間8〜15万円のランニングコストがかかる計算です。これに家賃と生活費を加えた月々の支出が無理のない範囲に収まるかどうかを、猫を迎える前に計算しておいてください。突発的な通院(1回5,000〜15,000円程度)もあるため、月々1〜2万円程度のペット用貯蓄を確保できると安心です。

仲介手数料を節約して飼育準備に回す

猫の飼育をスタートするタイミングでは、物件の初期費用と飼育グッズの購入費が同時に発生します。出費が集中する時期だからこそ、削れる部分は削っておきたいところです。

仲介手数料は不動産会社によって異なります。家賃1ヶ月分+税が一般的ですが、半額や無料で対応している会社も存在します。家賃7万円の物件で仲介手数料が半額になれば、約38,500円の節約です。この浮いた分を脱走防止グッズやキャリーバッグ、猫の医療費に回すほうが、猫との暮らしの質は確実に上がります。

ポータルサイトで気に入った物件を見つけたら、仲介手数料が安い不動産会社で同じ物件を取り扱っていないか確認してみてください。物件は同じでも、契約する不動産会社が違えば手数料は変わります。

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参考情報

ペット可物件の家賃相場(物件タイプ別)はSUUMO・HOME’S等のポータルサイト掲載物件(東京23区、2026年4月時点)を参考にしています。仲介手数料の法定上限は宅地建物取引業法第46条に基づきます。

賃貸で猫を飼い始めるには、物件選び・費用の見積もり・室内準備・契約確認の4つを事前にクリアしておく必要があります。ペット可物件の初期費用と猫の飼育費用が同時に発生するため、トータルで40〜70万円程度の出費を見込んでおくと安心です。

物件は防音性の高いRC造・SRC造を選び、脱走防止と爪とぎ対策を入居前に済ませておくことで、猫にとっても飼い主にとってもストレスの少ない環境を整えられます。契約前には敷金の返還条件と原状回復の範囲を必ず確認し、入居時に室内写真を撮影しておくことが退去時のトラブル防止につながります。

仲介手数料のような見直せるコストは積極的に見直して、猫との暮らしに本当に必要な準備に予算を振り向けていきましょう。