犬や猫と暮らしていると、体調を崩したときにすぐ診てもらえる病院が近くにあるかどうかは、住む場所を選ぶうえで無視できないポイントです。ペットの医療費は全額自己負担ですから、通院のしやすさは家計にも直結します。東京23区は全国で最も動物病院が集中する地域ですが、区によって数や密度にはかなり差があり、夜間救急への対応状況もまちまちです。
この記事では、東京23区の動物病院数をランキング形式で整理し、夜間救急施設の所在地や「犬の登録頭数に対する病院の充足率」という独自の視点まで含めて、ペットの医療環境からエリアを選ぶ方法を紹介します。
動物病院が多い東京23区ランキングTOP10
EPARKペットライフの登録数(2026年4月時点)をもとに、動物病院の登録が多い区を10区にしぼって掲載しました。新規開業や閉院によって数は変動するため、おおよその目安として活用してください。
| 順位 | エリア | 動物病院数(EPARK登録) | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 1 | 世田谷区 | 126件 | 住宅地が広く、専門病院・夜間救急も充実 |
| 2 | 練馬区 | 92件 | 住宅街に分散して立地。石神井公園周辺が手厚い |
| 3 | 杉並区 | 87件 | 荻窪~高円寺に密集。面積あたりの密度が高い |
| 4 | 大田区 | 79件 | 蒲田・大森駅周辺に集中 |
| 5 | 足立区 | 73件 | 北千住駅周辺が中心。西部はやや手薄 |
| 6 | 板橋区 | 53件 | 住宅地エリアに分散 |
| 7 | 渋谷区 | 53件 | 皮膚科・アレルギー専門医が目立つ |
| 8 | 港区 | 52件 | 高度医療の専門病院や猫専門クリニックが集中 |
| 9 | 目黒区 | 52件 | 面積は小さいが密度が高い。夜間救急あり |
| 10 | 中野区 | 約50件 | 住宅密集地に点在。新宿区の病院も使いやすい |
なお、農林水産省「飼育動物診療施設の開設届出状況」(令和5年)によると、東京都全体の動物診療施設数は1,959件で全国1位です。上のランキングはEPARKへの掲載数であり、未掲載の施設も含めると実際の病院数はさらに多くなります。
絶対数では世田谷区が圧倒的ですが、面積あたりの密度で見ると杉並区や目黒区も上位に入ります。港区は数こそ多くないものの、CTやMRIを備えた高度医療施設や猫専門のクリニック(Tokyo Cat Specialistsなど)が集まっているため、医療の「質」という点では23区のなかでも際立った存在です。
犬の登録頭数あたりの動物病院充足率で見る穴場エリア
動物病院の数だけでなく、「そのエリアにどれだけペットがいるか」を掛け合わせて考えると、エリアの実質的な医療アクセスが見えてきます。東京都保健医療局が公表している犬の登録頭数(令和5年度)とEPARK登録の病院数から、犬1,000頭あたりの動物病院数を算出しました。
| エリア | 犬の登録頭数 | 動物病院数 | 犬1,000頭あたりの病院数 |
|---|---|---|---|
| 世田谷区 | 44,099頭 | 126件 | 2.9件 |
| 杉並区 | 19,020頭 | 87件 | 4.6件 |
| 目黒区 | 12,102頭 | 52件 | 4.3件 |
| 渋谷区 | 11,650頭 | 53件 | 4.5件 |
| 練馬区 | 25,809頭 | 92件 | 3.6件 |
| 大田区 | 25,711頭 | 79件 | 3.1件 |
| 足立区 | 26,837頭 | 73件 | 2.7件 |
| 板橋区 | 18,821頭 | 53件 | 2.8件 |
杉並区・渋谷区・目黒区は犬1,000頭あたりの病院数が4件以上あり、ペット飼育世帯に対して病院が手厚いエリアといえます。一方、足立区や板橋区は犬の登録数が多いわりに病院が少なく、混雑しやすい傾向があります。世田谷区は絶対数では1位ですが、犬の登録頭数も23区最多の44,099頭に達しているため、充足率では中位にとどまる点は意外な結果です。
この指標はあくまで犬の登録頭数をベースにしたもので、猫の飼育頭数は含まれていません。ただ、犬の多いエリアは猫飼育世帯も多い傾向があるため、エリアの医療環境を大まかに把握する参考にはなります。
夜間・救急対応の動物病院がある主なエリア
ペットの体調が急変するのは診療時間外であることが少なくありません。夜間や休日に対応してくれる病院が近くにあるかどうかは、いざというときの安心に直結します。東京都内で夜間救急に対応している主な施設を整理しました。
| 施設名 | 所在地 | 診療時間 | 対応動物 |
|---|---|---|---|
| TRVA動物医療センター | 世田谷区深沢8-19-12 | 夜間救急 20:00〜翌6:00 | 犬・猫 |
| 夜間救急動物病院 目黒 | 目黒区碑文谷4-15-15 | 20:00〜翌8:00(年中無休) | 犬・猫 |
| ひがし東京夜間救急動物医療センター | 江東区亀戸6-38-11 | 19:00〜翌7:00 | 犬・猫 |
| 日本動物医療センター | 渋谷区本町6-22-3 | 24時間対応(年中無休) | 犬・猫ほか |
| 杉並動物夜間救急医療センター | 杉並区松庵 | 夜間救急 20:00〜翌2:00 | 犬・猫 |
| ALLONE八王子動物医療センター | 八王子市みなみ野 | 24時間対応 | 犬・猫ほか |
23区西部は世田谷区のTRVA、東部は江東区のひがし東京夜間救急動物医療センター、南部は目黒の夜間救急動物病院がカバーしている構図です。練馬区や板橋区など23区北部に住んでいる場合、隣接する武蔵野市・川口市の夜間病院も選択肢に入ります。
24時間対応の施設は渋谷区の日本動物医療センターと八王子市のALLONEの2カ所に限られます。引越し先を決める前に、自宅候補から車で30分以内に到着できる夜間救急病院があるかどうかを確認しておくのが実践的です。
夜間救急の初診料は5,000円から15,000円が相場で、通常の昼間診察より高額になるケースが大半です。検査や処置が加わると数万円の請求になることもあるため、ペット保険への加入を事前に検討しておくと、急患時の費用面での不安が軽くなります。
専門病院・高度医療が受けられるエリア
定期健診やワクチン接種であればどの区でも受けられますが、CTやMRIを使った精密検査、腫瘍外科、整形外科といった高度な医療は対応できる施設が限られます。
| 診療科目 | 主な集中エリア | 備考 |
|---|---|---|
| 腫瘍科(がん治療) | 港区・世田谷区 | 大学病院レベルの設備を持つ施設あり |
| 整形外科(骨折・関節) | 世田谷区・練馬区 | 小型犬の膝蓋骨脱臼に対応する病院が多い |
| 皮膚科・アレルギー | 渋谷区・目黒区 | アレルギー専門の獣医師が常勤 |
| 眼科 | 港区・世田谷区 | 眼科専門の動物病院は都内でも数軒程度 |
| 歯科 | 大田区・世田谷区 | 犬猫の歯周病治療に対応 |
| 猫専門 | 港区 | Tokyo Cat Specialistsなど |
持病のあるペットや高齢のペットと暮らしている場合は、専門病院へのアクセスのしやすさがエリア選びの重要な判断基準になります。普段のかかりつけ医は自宅近くで選び、専門的な治療が必要になったときだけ港区や世田谷区の専門病院に通うという二段構えが現実的です。
主要エリア別の通いやすさと動物病院の分布
動物病院の数だけでなく、自宅からの通いやすさもエリア選びでは見逃せません。主要4区について、病院が集まっている駅周辺の特徴を整理しました。
世田谷区では三軒茶屋駅・駒沢大学駅・用賀駅の周辺に動物病院が密集しています。駒沢公園付近にはCT検査に対応する施設もあり、散歩ついでに通院しやすい立地です。夜間救急のTRVA動物医療センターも区内にあり、時間外の安心感でも他区をリードしています。
杉並区は荻窪駅・西荻窪駅・高円寺駅の周辺に動物病院が集中しており、住宅街の裏通りにある小規模な病院が多いのが特徴です。待ち時間が比較的短い病院を見つけやすく、仕事帰りの19時〜20時台まで診療している病院も少なくありません。
練馬区は石神井公園駅・大泉学園駅・光が丘駅の各駅周辺にバランスよく分布しています。光が丘公園の近くに住めば、散歩と通院を徒歩で完結できる環境が整います。車を持たない飼い主にとって生活動線が組みやすいエリアです。
港区は麻布十番駅・白金高輪駅の周辺に高度医療対応のクリニックが複数あります。セカンドオピニオンのために他区から通う飼い主もいるため、人気の病院は初診予約が取りにくいことも。物件を探す段階からリサーチを始めておくのが得策です。
動物病院が少ないエリアの注意点と医療費の目安
23区のなかにも動物病院が少ないエリアは存在します。千代田区や中央区はオフィス街中心で居住人口が少なく、病院数も限られます。荒川区・台東区は面積が小さいぶん選択肢が少なめです。こうしたエリアでペットと暮らす場合、隣接区の病院を「かかりつけ候補」に含めるのが現実的な対策で、区の境界に住めば徒歩や自転車で隣の区の病院に通えるケースも多くあります。
足立区のように面積が広い区では、北千住駅周辺に病院が集中する一方、舎人や西新井方面はやや手薄です。同じ区でも駅からの距離によって通院環境がまったく変わるため、物件選びの段階で最寄りの動物病院の場所と診療時間を調べておくことが大切です。
なお、東京23区内であれば診察料に極端なエリア差はありません。初診料は1,000〜2,000円、混合ワクチンは5,000〜8,000円/年、狂犬病予防注射は約3,500円/年、フィラリア予防薬は1,500〜3,000円/月で、犬の予防医療費だけで年間3万〜5万円が目安です。港区や渋谷区の高級住宅地にある病院は設備が充実しているぶん若干高めですが、数千円の差にとどまります。それよりも影響が大きいのは、通院のしやすさによる「通院頻度」と「交通手段のコスト」です。徒歩で通える病院が近所にあれば、タクシー代がかからず、急な体調変化にも素早く対応できます。
動物病院が充実したエリアでペット可物件を探すコツ
動物病院が多いエリアは住宅地として成熟した地域であることが多く、ペット可物件の供給も比較的多い傾向があります。世田谷区・練馬区・杉並区は病院数と物件の選択肢の両方を満たすエリアとして、優先的に検討する価値があるでしょう。
物件探しと並行してやっておきたいのが、かかりつけ候補のリストアップです。入居前に2〜3軒の動物病院をピックアップし、引越し後に健康診断やワクチン接種などの軽めの受診で雰囲気を確かめると、長く通える病院が見つかりやすくなります。
確認しておきたいポイントは、診療時間(夜19〜20時まで対応しているか)、土日の診療有無、犬種・猫種への対応範囲、そして飼い主への説明の丁寧さです。口コミも参考になりますが、動物病院は人間の病院以上に獣医師との相性が影響します。実際に足を運んでみないとわからない部分が大きいので、初回は気軽に訪問するくらいの感覚で十分です。
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参考情報
- 動物病院の登録数: EPARKペットライフ各区ページの掲載件数(2026年4月確認)
- 動物診療施設の全国統計: 農林水産省「飼育動物診療施設の開設届出状況」令和5年(東京都全体1,882施設)
- 犬の登録頭数: 東京都保健医療局「令和5年度 犬の登録頭数・狂犬病予防注射頭数(東京都内区市町村別)」
- 夜間救急動物病院の診療時間・所在地: 各施設の公式サイト(2026年4月確認)
- 診療費用の目安: 日本獣医師会「家庭飼育動物(犬・猫)の診療料金実態調査」および各病院の料金表
新規開業・閉院により病院数は変動します。受診前に各施設の公式サイトまたは電話で最新の診療時間・対応状況をご確認ください。
動物病院の数で選ぶなら世田谷区・練馬区・杉並区がトップ3ですが、犬の登録頭数あたりの充足率では杉並区・渋谷区・目黒区が上位に入ります。夜間救急を重視するならTRVAのある世田谷区か、24時間対応の日本動物医療センターがある渋谷区が安心です。
動物病院の「数」と「ペット飼育世帯に対する充足率」を両方見ることで、混雑しにくく通いやすいエリアが浮かび上がります。引越し先を決める前に、かかりつけ候補の病院を2〜3軒ピックアップしておくと、新生活のスタートがスムーズになるはずです。