ペットと暮らした賃貸を退去するとき、壁紙のひっかき傷やフローリングのキズを見て不安になる方は多いはずです。ペット可物件の退去費用は1Kで5万〜30万円が相場。ただし軽度な傷であればDIYで十分に目立たなくできます。

この記事では傷の種類別にDIY補修の手順を製品名・費用付きで解説し、退去立会いで使える減価償却の知識と交渉のコツまでまとめました。

ペットがつけやすい傷のパターンと業者費用の相場

犬と猫では傷のパターンが異なるため、対策も変わります。退去時の請求で多いのは壁紙のひっかき傷、フローリングの擦り傷、柱のかじり跡の3つです。

傷の種類主な原因よくある場所DIY難易度業者に頼んだ場合の費用
壁紙のひっかき傷猫の爪とぎ、犬のジャンプ壁の下部(高さ30〜80cm)やや簡単1面10,000〜25,000円
壁紙のめくれ猫が壁紙の端をめくる壁紙の継ぎ目、部屋の角簡単1箇所5,000〜15,000円
フローリングの擦り傷犬の爪リビング、廊下簡単1箇所8,000〜20,000円
フローリングの凹み犬が走り回る、物を落とすリビング全体やや難しい1箇所15,000〜25,000円
柱・建具のかじり跡犬のかじり癖ドア枠、巾木難しい1箇所15,000〜30,000円
壁紙の皮脂汚れ・黄ばみペットの体脂、よだれ犬のお気に入りの場所簡単1面5,000〜15,000円

業者費用の合計で見ると、壁紙2面+フローリング3箇所+柱1箇所で6万〜10万円前後。同じ箇所をDIYで対応すれば材料費3,000〜6,000円程度で済むため、差額は大きくなります。

壁紙の傷とめくれをDIYで補修する手順

壁紙の傷は、退去時の立会いで最も指摘されやすいポイントです。傷の深さによって使う道具と手順が変わるため、3段階に分けて解説します。

浅いひっかき傷にはパテ+補修ペン

壁紙の表面に細い筋が入っている程度なら、パテで埋めてから色を合わせるだけで目立たなくなります。

使う道具と費用の目安は以下のとおりです。

道具製品名実売価格(2026年4月時点)購入場所
壁紙補修パテセメダイン「かべパテ」300g(HC-121)380〜500円カインズ、コーナン、Amazon
ヘラパテ付属品またはプラスチック製100〜200円100円ショップ
サンドペーパー(#240)汎用品100円程度ホームセンター
壁紙用補修ペンコニシ「ボンド 壁紙補修用」300〜500円カインズ、Amazon

傷にパテを押し込むようにヘラで塗り、表面を平らにならします。乾燥時間は約1時間。乾いたら#240のサンドペーパーで軽く研磨し、壁紙と色が合わなければ補修ペンで着色します。セメダイン「かべパテ」は25gの小容量タイプがセリアやダイソーでも販売されているため、傷が少ない場合は100円ショップで試す手もあります。

めくれた壁紙には壁紙用のりで圧着

壁紙がベロッとめくれている場合は、接着剤で貼り直す方法が有効です。アサヒペン「壁紙の補修のり」(350〜500円/25ml)をめくれた裏側に塗り、ローラーで圧着します。はみ出した接着剤は乾く前に濡れタオルで拭き取ってください。拭き取りが遅れるとテカリの原因になります。

ヤヨイ化学の「壁紙施工用ボンド」(300〜450円)も使えます。こちらは粘度が高く、垂れにくいのが特徴で、天井近くのめくれ補修に向いています。

壁紙が破れて下地が見えている場合

壁紙が破れて石膏ボードが見えている場合は、同じ柄の壁紙で部分的に貼り替えます。入居時の壁紙の余りがあれば最善。なくても品番を管理会社に問い合わせれば入手できることがあります。

壁紙補修キット(800〜1,500円)はカッター、のり、ローラーのセットで手軽です。破れた箇所より一回り大きく四角にカッターで切り取り、同サイズの新しい壁紙を貼り付けます。切り口をまっすぐにすることが、仕上がりを自然に見せるコツです。

フローリングの傷を消すDIY補修テクニック

犬の爪によるフローリングの擦り傷は、程度によって補修方法が3段階に分かれます。

傷の程度補修方法製品名実売価格
浅い擦り傷(白い線が入る程度)クレヨンで着色建築の友「かくれん棒」4色セット600〜800円
やや深い傷(爪が引っかかる)調色クレヨンで充填建築の友「かくれん棒 調色4本セット」1,200〜1,400円
深い凹み(犬が走って削れた)シェラック充填+着色ハウスボックス「キズなおしま専科 ライト」3,500〜4,500円
広範囲の傷(複数箇所・深い)DIYでは限界。業者に依頼1箇所8,000〜20,000円

コスパが高いのは「かくれん棒」です。フローリングに近い色を選んで傷に塗り込み、布で余分を拭き取るだけ。複数の色を混ぜると木目の濃淡が出て自然な仕上がりに近づきます。カインズやコーナンの補修コーナーには色見本があるため、床材の写真をスマホで持参すると色選びの失敗を減らせます。

深い凹みには「キズなおしま専科」が有効です。電熱コテでシェラック(天然樹脂)を溶かし、傷に流し込んで埋める仕組みで、プロの補修業者も使う素材です。3,500〜4,500円と他のDIY道具より高価ですが、業者1箇所分(8,000〜20,000円)と比べれば十分元が取れます。

柱・ドア枠のかじり跡を目立たなくする方法

犬のかじり跡は木部に深く食い込んでいるケースが多く、完全に元どおりにするのは難しい傷です。ただ、「遠目にわからない程度」まで補修することは可能です。

セメダイン「エポキシパテ 木部用」(600〜800円)をかじり跡に充填し、完全に硬化するまで24時間待ちます。硬化後は#180のサンドペーパーで粗く研磨してから#240で仕上げ、表面を平らに整えます。色合わせはフローリング用の着色ペンか、水性ニスを薄く塗ると自然な見た目に近づきます。

エポキシパテは硬化後の強度が高い点が特徴で、万が一退去前に犬が再びかじっても崩れにくい仕上がりになります。

ドア枠や巾木のかじり跡が広範囲の場合は、DIY補修で逆に見た目が悪化するリスクがあります。パテの色が木材と合わない場合や、研磨で周囲の塗装まで剥がれた場合は業者に依頼したほうが結果的に安上がりです。

壁紙の汚れ落としに使える洗浄テクニック

ペットの皮脂や、よだれが壁紙について黄ばみになった汚れは、洗浄剤で落ちるケースがあります。一般的なビニールクロス(ほとんどの賃貸で使われているタイプ)は水拭きに対応しているため、まずは軽い方法から試してください。

汚れの種類洗浄剤方法注意点
軽い皮脂汚れ食器用中性洗剤の薄め液柔らかい布で拭く強くこすらない
黄ばみセスキ炭酸ソーダ水(水500mlに小さじ1)スプレーして5分放置後に拭き取り目立たない場所で変色テスト
よだれ跡重曹水(水200mlに小さじ1)スプレーして拭き取る織物系壁紙には使わない
しつこい汚れメラミンスポンジ軽くこする壁紙表面を削るリスクあり

メラミンスポンジ(レック「激落ちくん」など100〜200円)は汚れ落ちが抜群ですが、壁紙表面の模様ごと削り取る可能性があります。最終手段として、必ず目立たない場所(家具の裏など)で試してから使ってください。

退去立会い前のDIY補修チェックリスト

DIY補修は「やればやるほど良い」わけではありません。直す必要のない傷まで手を加えると、逆にプロの仕上がりとの差が目立って指摘されるリスクがあります。退去前に以下のチェックリストで優先順位をつけてください。

補修すべき傷の判断基準:

  • 壁紙の浅いひっかき傷やめくれ → DIYで対応(費用対効果が高い)
  • フローリングの白い擦り傷 → クレヨンで着色(数分で完了する)
  • 壁紙の皮脂汚れ・黄ばみ → 洗浄で落ちる可能性が高い

DIYしないほうがよい傷:

  • 壁紙の広範囲な破れ(一面すべてがボロボロ) → 中途半端な補修が目立つ
  • フローリングの深い傷が10箇所以上 → 全面張り替えになる可能性が高く、部分補修の意味が薄い
  • 柱の広範囲なかじり跡 → 管理会社への事前相談を推奨

補修の前後で傷の状態をスマートフォンで撮影しておくことを勧めます。日付入りの写真は、退去立会い時に「もとからあった傷」と「ペットがつけた傷」を区別する証拠になります。

減価償却の知識で退去費用を減額する方法

DIY補修とあわせて知っておくべきなのが、原状回復費用の「減価償却」の考え方です。国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(再改訂版)では、設備には耐用年数が設定されており、入居年数が長いほど借主の負担割合が下がると定められています。

主な設備の耐用年数と負担割合の目安:

設備耐用年数入居3年の場合入居5年の場合入居6年以上
壁紙(クロス)6年張替費用の約50%張替費用の約17%残存価値1円(実質ゼロ)
カーペット6年同上同上同上
クッションフロア6年同上同上同上
フローリング(全面張替の場合)建物の耐用年数に準ずる経過年数で按分経過年数で按分経過年数で按分

たとえば壁紙の張り替え費用が8万円で入居5年なら、借主負担は8万円 x(6年 - 5年)/ 6年 = 約13,300円です。6年以上住んでいれば残存価値はほぼゼロのため、全額負担を求められるのは不合理という根拠になります。

ペットによる損傷は「通常の使用を超える損耗」と判断されやすいものの、耐用年数を過ぎた設備への全額請求にはガイドラインを根拠に交渉できます。退去立会い時に請求書の内訳と各設備の経過年数を照らし合わせてみてください。なお、耐用年数経過後でも張り替えの工賃(人件費)1〜2万円は借主に請求される可能性があります。

DIYで退去費用をどのくらい節約できるか

DIY補修にかかる費用と業者費用を比較した結果を一覧にまとめます。

損傷箇所DIY補修の費用業者の補修費用節約額
壁紙のひっかき傷(1面)500〜1,500円10,000〜25,000円約9,000〜23,000円
フローリングの擦り傷(3箇所)600〜1,400円24,000〜60,000円約23,000〜59,000円
壁紙のめくれ(2箇所)350〜500円10,000〜30,000円約10,000〜30,000円
柱のかじり跡(1箇所)600〜1,500円15,000〜30,000円約14,000〜29,000円
壁紙の汚れ落とし(2面)100〜300円10,000〜30,000円約10,000〜30,000円

上記すべてをDIYで対応した場合、業者費用の合計69,000〜175,000円に対してDIY費用は2,150〜5,200円。差額は6万〜17万円です。ここに減価償却の知識を組み合わせれば、さらに負担を減らせます。DIYで直せるところは自分で対応し、直せない傷は減価償却を根拠に交渉する二段構えが、退去費用を最小化する実践的な戦略です。

よくある質問

Q. 退去前にDIY補修した傷を大家さんに報告する義務はありますか?

法律上の報告義務はありません。ただし補修箇所が目立つほど悪化していた場合や、追加の補修を求められた場合は、DIYで対処したことを説明するほうがトラブルを防げます。退去立会い前に「自分で軽く補修しました」と伝えておくと、担当者の心証もよくなります。

Q. 壁紙に猫のひっかき傷がある場合、全面張替えになりますか?

傷の範囲次第です。国土交通省のガイドラインでは、ペットによる損傷は「ペット可」として認めた物件であっても借主負担が認められる場合があります。ただし張替えの範囲は「毀損部分を含む壁全体」が最大で、隣の壁まで含めた全室張替えを求めることは通常認められません。

Q. 入居6年以上なら壁紙の修繕費はかからないのですか?

完全にゼロにはなりません。壁紙は入居6年で「残存価値1円」となりますが、「廃棄と張替えの手間賃(施工費)」は借主負担となる考え方があります。施工費は1平米あたり1,000〜1,500円程度で、全面張替えでも材料費ほどの負担で済む計算です。

Q. フローリングの爪傷は何年入居すれば負担が軽くなりますか?

フローリング全面は耐用年数22年(木造建物と同等)、クッションフロアは6年が目安です。一方「部分補修」では耐用年数の考え方が適用されにくく、傷の箇所数×補修単価での請求になることも多いです。DIYで補修しておくことで「通常損耗の範囲内」とみなされやすくなります。

Q. 退去立会いに業者を同席させることはできますか?

できます。弁護士や消費生活センターのアドバイザーを同席させることも可能ですが、事前予約が必要です。ひとりでの立会いに不安がある場合は、消費者ホットライン(188)に相談するか、入居者向けの立会いサポートサービス(有料)を利用する方法があります。

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参考情報

製品価格はセメダイン・建築の友各公式サイト、Amazon、モノタロウ、カインズの掲載価格(2026年4月確認)を参考にしています。退去費用の相場はHOME’S、リスクベネフィット(2025〜2026年掲載)を参照。原状回復・減価償却に関する情報は国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」再改訂版(2011年公表、2024年参考資料更新)に基づいています。

ペットがつけた壁紙やフローリングの傷は、軽度であればホームセンターの道具でDIY補修が可能です。材料費は一式で3,000〜6,000円程度、業者1箇所分にも満たない金額で対応できます。入居6年以上なら壁紙の減価償却で借主負担が大幅に下がるため、ガイドラインの知識も合わせて活用してください。DIYで直す箇所と交渉で減らす箇所を使い分けるのが、退去費用を最小限に抑えるコツです。