丸子橋のたもとから多摩川の河川敷に降りると、芝生の上を犬が走り回っている光景が目に入ってきます。川崎市に住む犬飼いにとって、多摩川は毎日の散歩コースであり、休日の遊び場でもある存在です。
川崎市は東京と横浜に挟まれた立地で、渋谷・品川・新宿のいずれにも30分以内でアクセスできる交通利便性を持ちながら、家賃は東京23区より明らかに抑えられます。7つの区で構成される市域は臨海部の工業地帯から北部の丘陵住宅地まで表情が多様で、ペット可物件の見つかりやすさや散歩環境にも区ごとに大きな差があります。この記事では、犬や猫と暮らす視点から川崎市の各区を比較し、エリア選びに必要な情報をまとめました。
区別の家賃相場とペット可物件の供給状況
川崎市7区の家賃帯とペット可物件の充実度を一覧にしました。東急線沿線(中原区・高津区・宮前区)に供給が集中する傾向があり、JR南武線沿線は駅徒歩15分以上の物件にペット可が多く出ます。
| 区 | 1K〜1LDK | 2LDK | ペット可物件 | 主な最寄り駅 |
|---|---|---|---|---|
| 中原区 | 7.5〜9.5万円 | 12〜16万円 | 多い | 武蔵小杉・元住吉・新丸子 |
| 高津区 | 7.0〜9.0万円 | 10〜14万円 | やや多い | 溝の口・二子新地・高津 |
| 多摩区 | 6.0〜8.0万円 | 9〜12万円 | やや多い | 向ヶ丘遊園・登戸・生田 |
| 宮前区 | 6.5〜8.5万円 | 10〜13万円 | 普通 | 鷺沼・宮崎台・宮前平 |
| 麻生区 | 6.5〜8.5万円 | 10〜13万円 | 普通 | 新百合ヶ丘・百合ヶ丘 |
| 幸区 | 7.0〜9.0万円 | 11〜14万円 | やや少ない | 川崎(JR西口側)・鹿島田 |
| 川崎区 | 6.5〜8.5万円 | 9〜12万円 | やや少ない | 川崎(JR東口側)・京急川崎 |
武蔵小杉のタワーマンション周辺はペット可の1LDKで10万円前後、2LDKで15万円を超えるケースが多い一方、隣駅の元住吉なら1LDKのペット可が8万円台で見つかることもあります。同じ中原区でも駅ひとつでかなり印象が変わるため、候補エリアは複数の駅で検索してみてください。
中原区(武蔵小杉・元住吉・新丸子)— 物件数と交通利便性のトップ
武蔵小杉はJR横須賀線・湘南新宿ライン、東急東横線・目黒線と複数路線が利用でき、渋谷まで約15分・品川まで約10分。川崎市内で交通アクセスに最も優れたエリアです。再開発で誕生したタワーマンション群にはペット可物件が多く含まれていて、再開発エリアの商業施設にはテラス席で犬同伴可能な飲食店も点在します。
ただしタワマンエリアの家賃は高めで、2LDKで15万円を超える物件が大半です。予算を抑えるなら元住吉や新丸子が狙い目になります。
元住吉はブレーメン通り商店街とオズ通り商店街の2つが駅から延びていて、惣菜店・ベーカリー・個人経営の飲食店が並ぶ温かみのある街。武蔵小杉より1〜1.5万円ほど家賃が安く、1LDKのペット可物件が8万円台で出ることもあります。商店街を犬と歩くのは、なかなか楽しい散歩コースです。
新丸子は多摩川河川敷に最も近い立地です。丸子橋のたもとから河川敷に出ると、広大な芝生と見通しのよい散歩道が広がります。中型犬や大型犬を飼っていて毎日の散歩距離が長い方には特に向いたエリアでしょう。新丸子にはアニマルメディカルセンター(中原区新丸子東2丁目)があり、24時間365日の診療体制を取っています。夜中に急に体調を崩した場合でも駆け込める病院が徒歩圏にあるのは、ペットオーナーにとって大きな安心材料です。
中原区は犬連れOKの飲食店の選択肢も市内で多いエリアです。テラス席で同伴可能な店が中心ですが、店内利用可の店も少数ながら存在します。営業形態は変動が早いため、訪問前にSNSや公式サイトで最新情報を確認するのが安心です。
高津区(溝の口・二子新地)— 二子玉川の利便性を川崎価格で
溝の口は東急田園都市線とJR南武線が交差するターミナル駅で、渋谷まで約15分、川崎まで約15分。駅前にはマルイファミリー溝口やノクティプラザが揃い、日用品の買い出しに困ることはありません。
二子新地は多摩川のすぐそばに位置し、河川敷への散歩が日課にしやすい環境です。二子玉川(東京都世田谷区)とは橋を渡るだけの距離で、川崎市に住みながら二子玉川ライズの商業施設も利用できるのが大きなメリット。家賃は溝の口より安く、1LDKで7.5万円台から出る場合もあります。
高津区にはAsian Cafe Hiroz(高津区下作延、溝の口駅徒歩3分)があり、1Fテラス席で犬同伴が可能です。本格石窯で焼き上げるピッツァをはじめとしたイタリアンが好評で、散歩帰りの寄り道にちょうどいい距離感。
高津駅周辺は落ち着いた住宅地が広がり、大山街道沿いに昔ながらの商店が残る雰囲気です。溝の口の利便性を享受しつつ静かな環境で暮らせる穴場のエリアといえます。
高津区で見落としがちなのが夜間救急の利便性です。川崎市獣医師会の夜間動物救急センターは高津区久地2-5-8の日本動物高度医療センター内に設置されていて、診療時間は20時〜24時。田園都市線二子新地駅またはJR南武線久地駅から徒歩圏にあり、高津区に住んでいればタクシーでも10分程度で到着できます。電話番号は044-811-9950で、完全予約制のため必ず電話してから来院する流れです。
多摩区(向ヶ丘遊園・登戸・生田)— 家賃が安く生田緑地が近い
川崎市内で家賃を最も抑えやすいエリアです。新宿まで小田急線急行で約20分と都心アクセスも悪くなく、コストパフォーマンスを重視するペットオーナーには有力な選択肢になります。2LDKのペット可物件が10万円前後で見つかるのは、川崎市内では多摩区ならではの強みです。
生田緑地は面積約180万平方メートルの大規模な緑地です。藤子・F・不二雄ミュージアムや岡本太郎美術館も併設されていますが、犬飼いにとっての価値は森のなかの散策路にあります。枡形山の展望台に向かう散策路は木漏れ日が心地よく、晴れた日には展望台から富士山やスカイツリーまで見渡せます。夏場でも木陰が多くて涼しいため、暑さに弱いフレンチブルドッグやパグなどの短頭種にとっては特に貴重な散歩コースです。
登戸駅は小田急線とJR南武線の乗り換え駅。向ヶ丘遊園駅は生田緑地の最寄り駅で、西口から徒歩10分ほどで緑地の入口に到着します。生田駅周辺は学生街の雰囲気があり、家賃は多摩区内でもさらに安い水準。ペットフード・ペットシーツなど消耗品の調達先はやや限られますが、登戸や溝の口まで出れば大型店舗があります。
多摩区には宿河原・登戸エリアを中心に犬連れ可の小規模カフェが点在しています。散歩帰りに犬と一息つける場所があるのは、日常の満足度に直結するポイントです(営業状況や同伴条件は変動するため、訪問前に各店のSNS等で最新情報を確認してください)。
宮前区・麻生区 — 丘陵地の住宅街で自然派の暮らし
宮前区は東急田園都市線沿線の丘陵地に住宅街が広がるエリアです。鷺沼駅は急行停車駅で、渋谷まで約20分のアクセス。東高根森林公園は県立の自然公園で、シラカシの原生林のなかを犬と歩ける貴重なスポットです。面積は約10万平方メートルで、古代の住居跡が残る歴史的な場所でもあります。
坂道が多いエリアのため散歩時の負荷は高めですが、その分犬の運動量を確保しやすい環境でもあります。ボーダーコリーやラブラドールなど活発な犬種と暮らす方には、むしろ向いたエリアかもしれません。宮崎台のペット可マンションは駅から徒歩10分圏内で出ることがあり、1LDKで7万円台から見つかるケースも。
麻生区は新百合ヶ丘を中心に洗練された街並みが広がります。小田急線急行で新宿まで約25分。王禅寺ふるさと公園は芝生広場と散策路が整備された約4.3万平方メートルの公園で、犬の散歩にはのんびりした雰囲気が合います。
麻生区にはLily cafe(麻生区千代が丘)があり、テラス席だけでなく店内にも犬同伴で入れる数少ないカフェ・レストランバーです。犬用メニューもあるので、休日の散歩ついでに立ち寄る方が多いとのこと。
幸区・川崎区 — 再開発エリアと臨海部の穴場
幸区はラゾーナ川崎のある川崎駅西口側。大型商業施設が充実しているため日用品の買い物には困りませんが、ペット可物件の数は中原区・高津区と比べると少なめです。夢見ヶ崎動物公園(幸区南加瀬)は入園無料の小さな動物公園で、高台からの眺望が良好。レッサーパンダやペンギンを見ながら園内を散策でき、犬連れの散歩客も見かけます。
川崎区で注目したいのが東扇島東公園のドッグランです。川崎市が運営する公式ドッグラン「わんわん広場」が設置されていて、利用は無料。事前登録制で、犬鑑札(またはマイクロチップ登録証明書)の写し・1年以内の予防注射証明の写し・飼犬の写真2枚を提出して登録します。登録の有効期間は1年間で、東扇島東公園管理事務所(044-288-5523)で手続きできます。
| 項目 | 東扇島東公園わんわん広場 |
|---|---|
| 所在地 | 川崎市川崎区東扇島58-1 |
| 利用料金 | 無料(登録制) |
| 登録に必要な書類 | 犬鑑札またはマイクロチップ登録証明書の写し / 1年以内の予防注射証明の写し / 飼犬の写真2枚(4.5cm×3.5cm) |
| 登録有効期間 | 登録日から1年間 |
| 利用時間 | 9:00〜17:00(6〜9月は6:00〜19:00) |
| 管理事務所受付時間 | 8:30〜17:15(12/29〜1/3休業) |
東扇島は臨海部のため公共交通でのアクセスがやや不便(川崎駅からバスで約20分)ですが、車で来る方にとっては駐車場も完備されており使い勝手のよいドッグランです。園内からは京浜運河を挟んで工場夜景が見え、夕方の散歩は独特の雰囲気があります。
川崎区ではカワスイ川崎水族館(川崎ルフロン10F)の「ふれあいDog park」も話題のスポットです。20分800円でマルチーズやトイプードルなどの犬とふれあえる施設で、犬を飼う前に「本当にお世話できるか」を体験する場としても使えます(水族館の入館チケットが別途必要)。
犬種別に見る川崎エリアの相性
家賃や交通利便性だけでなく、飼っている犬種の特性からエリアを選ぶ視点も大切です。体が大きい犬種は運動量の確保が最優先になりますし、暑さに弱い短頭種は夏場の散歩環境が決め手になります。
| 犬種の特性 | おすすめエリア | 理由 |
|---|---|---|
| 中〜大型犬(ラブラドール、ゴールデンなど) | 中原区(新丸子)・高津区(二子新地) | 多摩川河川敷で長距離散歩が可能。河川敷は見通しが良くリード散歩でも安心 |
| 活発な犬種(ボーダーコリー、ジャックラッセルなど) | 宮前区・多摩区 | 坂道や森の散策路で運動量を確保しやすい。東高根森林公園や生田緑地が日常使いできる |
| 短頭種(フレブル、パグなど) | 多摩区(向ヶ丘遊園) | 生田緑地の木陰ルートで夏場の散歩がしやすい。河川敷は日差しを遮るものが少なく夏は厳しい |
| 小型犬(チワワ、トイプードルなど) | 中原区(元住吉)・高津区(溝の口) | 商店街やカフェが充実し、普段の散歩コースにバリエーションが出る。室内同伴OKのカフェも利用しやすい |
| 猫(室内飼い前提) | 多摩区・麻生区 | 家賃が抑えめで広い間取りを確保しやすい。静かな住宅街で窓からの眺めが穏やか |
犬種別の相性はあくまで参考です。同じ犬種でも個体差がありますし、飼い主の生活パターン(在宅勤務か通勤か、車の有無など)で最適解は変わります。ただ「自分の犬にとってどんな環境がベストか」を考えてからエリアを絞り込むと、入居後のミスマッチが起きにくくなります。
東京23区との初期費用の比較
「東京のペット可物件は初期費用が高い」と感じて川崎を検討する方は少なくありません。実際にどのくらい差があるのか、典型的なケースで比較してみましょう。
| 比較項目 | 東京23区(城南エリア) | 川崎市(中原区・高津区) |
|---|---|---|
| ペット可物件の敷金 | 2ヶ月が多い | 1〜2ヶ月 |
| 礼金 | 1ヶ月が一般的 | 0〜1ヶ月 |
| ペット飼育の月額加算 | 3,000〜5,000円が多い | 物件により異なる(加算なしも多い) |
| 初期費用の目安 | 家賃の5〜6ヶ月分 | 家賃の4〜5ヶ月分 |
| ペット可1LDKの相場 | 10〜14万円 | 7.5〜10万円 |
たとえば世田谷区でペット可1LDK(家賃11万円)を借りた場合、初期費用はおよそ55〜66万円。川崎市中原区の元住吉で同条件の物件(家賃8.5万円)を借りた場合、初期費用は34〜42.5万円程度で済みます。差額は20万円前後。この差額をペットの医療費の備え(ペット保険の年額は犬で3〜6万円程度)やフードのグレードアップに回せるのは、実質的に大きなメリットです。
川崎市はJRや東急で都内に出やすいため、「勤務先は東京だけど住まいは川崎」という選択は通勤時間のペナルティが小さい割に家賃・初期費用の差額が大きく、ペットオーナーにとってはコスパの良い選択肢になります。
多摩川河川敷と大型公園の散歩ガイド
川崎市でペットと暮らす最大のメリットは、多摩川河川敷という巨大な散歩インフラが市域を貫いていることです。加えて各区に個性的な大型公園があり、散歩コースのバリエーションに困ることはありません。
| スポット | 区 | 広さ | 散歩の特徴 |
|---|---|---|---|
| 多摩川河川敷(丸子橋〜二子橋) | 中原区〜高津区 | 約5km区間 | 舗装路と芝生が並走。中〜大型犬の長距離散歩に最適 |
| 等々力緑地 | 中原区 | 約44万m2 | 芝生広場が広い。等々力ドッグフェスティバル開催実績あり |
| 生田緑地 | 多摩区 | 約180万m2 | 森林内の散策路。夏でも涼しく短頭種に向く |
| 東高根森林公園 | 宮前区 | 約10万m2 | シラカシの原生林。静かで落ち着いた散歩向き |
| 夢見ヶ崎動物公園 | 幸区 | 約3万m2 | 入園無料。高台から市街地を一望 |
| 王禅寺ふるさと公園 | 麻生区 | 約4.3万m2 | 芝生広場と散策路。のんびりペースの散歩に |
| 東扇島東公園 | 川崎区 | — | 無料ドッグラン「わんわん広場」あり。海風と工場夜景 |
多摩川河川敷は丸子橋(中原区)から二子橋(高津区)にかけての約5km区間が特に整備されていて、休日は犬連れの散歩客で賑わいます。舗装された散歩道と芝生エリアが並走しているため、リード散歩でもノーリードエリア(指定がある場合)でも使いやすい構造です。中〜大型犬の長距離散歩にはうってつけの環境ですが、日差しを遮るものが少ないため、真夏の日中は避けたほうが無難です。朝7時台や夕方17時以降なら気温が下がり、地面の温度も犬の肉球に優しくなります。
生田緑地は「森のなかを歩く散歩」という、河川敷とはまったく違う体験ができます。枡形山への散策路は片道20分ほどで、適度なアップダウンが犬の体力づくりにもなります。
動物病院とペット関連施設
川崎市内の動物病院は130軒以上あり、中原区と高津区に集中する傾向があります。通常診療のかかりつけ医に加え、夜間救急の選択肢が複数あるのは川崎の強みです。
| 施設名 | 所在地 | 診療時間 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| アニマルメディカルセンター | 中原区新丸子東2丁目 | 24時間365日 | 救急医療と専門医療。CT・MRIなど高度医療設備あり |
| 川崎市獣医師会 夜間動物救急センター | 高津区久地2-5-8(日本動物高度医療センター内) | 20時〜24時(完全予約制) | 必ず電話で症状を伝えてから来院。駐車場あり |
| オリーブ動物病院 | 幸区柳町 | 月火金土 22時まで診療 | 夜間時間帯(20時〜22時)も診療対応。木曜休診 |
ペット用品の調達先はエリアによって異なりますが、アリオ溝の口(高津区)やラゾーナ川崎(幸区)にはペットショップとペット用品売場があり、フード・トイレ用品・おもちゃなど一通り揃います。
引越し前に候補エリアの動物病院を2〜3件下調べしておくと、入居後にスムーズにかかりつけ医を見つけられます。特にペットが持病を抱えている場合は、専門外来の有無やかかりつけ医からの紹介状対応なども事前に確認しておくと安心です。
まとめ
川崎市は「東京へのアクセスの良さ」と「家賃の手頃さ」を両立できる数少ないエリアで、多摩川河川敷や生田緑地など散歩環境にも恵まれています。ペット可物件の供給は中原区・高津区が中心ですが、予算を抑えたい方は多摩区、自然派の暮らしを求める方は宮前区・麻生区が候補になります。まずは不動産ポータルサイトで2〜3エリアのペット可物件を検索し、家賃帯と散歩環境のバランスが自分に合うエリアを絞り込んでみてください。
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参考情報
各エリアの家賃相場はSUUMO・HOME’S等の不動産ポータルサイトの掲載データ(2026年4月確認)に基づく概算値です。東扇島東公園わんわん広場の利用条件は川崎市公式サイト(2026年4月確認)に基づきます。川崎市獣医師会 夜間動物救急センターの情報は同会公式サイト(2026年4月確認)に基づきます。アニマルメディカルセンターの診療体制は同院公式サイト(2026年4月確認)に基づきます。ドッグカフェ・レストランの営業時間・サービス内容は変更される場合があるため、最新情報は各店舗のSNS・公式サイトでご確認ください。