賃貸物件で犬を飼いたいと考えたとき、何から準備すればいいのか迷う方は多いです。物件選びから飼育グッズの購入、行政への届出まで、やるべきことが想像以上にあります。

犬種による物件選びの違いや初期費用の現実的な金額もあわせて、賃貸で犬を飼い始めるまでの準備を一通り整理しました。

賃貸で犬を飼うための大前提

犬を飼うにはペット飼育が認められた物件に住んでいる必要があります。現在の住まいがペット不可であれば、引越しが前提です。

すでにペット可物件に住んでいる場合でも、犬を迎える前に管理会社や大家さんへの届出が求められるケースがほとんどです。契約書の特約欄を確認し、飼育できる頭数・犬種・体重制限を把握しておいてください。「小型犬1匹まで」という条件が最も一般的で、中型犬以上になると飼育可能な物件はかなり限られます。

ペット可物件の供給率は全賃貸物件の約15〜20%にとどまるのが現状です。「犬可」と「猫可」を分けている物件もあるため、犬種を決めてから物件探しに入ると効率的でしょう。ペット可と記載があっても爬虫類や大型犬は不可というケースもあるため、条件の詳細は必ず事前に確認してください。ペット不可の物件で無断飼育すると契約違反となり、違約金の請求や退去を求められるリスクがあります。

犬種別の物件選び

犬を飼い始めるにあたって、犬種のサイズは物件選びに直結します。体重制限のある物件が多いため、飼いたい犬種と住めるエリアの現実を照らし合わせておくことが大切です。

犬種の大きさ体重目安物件の選択肢代表犬種
超小型犬4kg以下ほとんどのペット可物件で飼育可能チワワ、ヨークシャーテリア、ポメラニアン
小型犬4〜10kgペット可物件の大半で飼育可能トイプードル、ミニチュアダックスフンド、シーズー
中型犬10〜25kg物件がかなり限られる。事前確認必須柴犬、ビーグル、コーギー
大型犬25kg以上飼育可能な物件は非常に少ないゴールデンレトリーバー、ラブラドール、バーニーズ

超小型犬や小型犬であれば選択肢はある程度広がります。ただし「ペット可」と記載されていても体重制限が10kgまでの物件は多いため、成犬時の予想体重がボーダーラインにかかる犬種(柴犬やコーギーなど)は注意が必要です。柴犬は成犬で8〜13kg程度と幅があり、10kgを超えるオスも珍しくありません。ペットショップやブリーダーに両親犬の体重を確認すると、成犬時のサイズを予測しやすくなります。

間取りと広さの現実的な目安

犬は室内で動き回ることもあるため、ある程度の広さは確保したいところです。

犬種サイズ最低ラインの間取り余裕のある間取り面積の目安
超小型犬1K(20平米〜)1DK以上20〜30平米
小型犬1K(25平米〜)1LDK以上25〜40平米
中型犬1LDK(35平米〜)2LDK以上35〜55平米
大型犬2LDK(50平米〜)3LDK以上50平米以上

小型犬であれば1K(25平米以上)でも飼えなくはありません。ただし、ケージとトイレを設置すると居住スペースがかなり圧迫されます。犬のストレスや生活の余裕を考えると、1LDKが現実的なラインでしょう。

バルコニーの有無も地味に大切なポイントです。犬用トイレシーツの天日干しや散歩後の足拭きタオルを乾かすスペースとして活用できます。ただし、バルコニーでの犬の放し飼いは多くの物件で禁止されているため、あくまで補助的なスペースと考えてください。

床材と階数の確認

フローリングの滑りやすさは見落とされがちなポイントです。ツルツルしたフローリングの部屋では、犬が走り回った際に膝や腰に負担がかかります。トイプードルやチワワなど小型犬はパテラ(膝蓋骨脱臼)になりやすい犬種として知られており、内見時に床の滑りやすさを確認しておくとよいでしょう。タイルカーペットやジョイントマットを敷けば対策できますが、その分の費用(6畳で5,000〜15,000円程度)も見込んでおいてください。

1階の物件は犬の飼育に向いています。エレベーターの乗り降りが不要で、階下への足音を気にしなくてよいメリットがあります。専用庭付きの1階物件はペット可の中でも人気が高く、家賃がやや高めに設定されているケースもあります。

周辺環境で見落としがちなこと

散歩は犬の健康維持に不可欠なので、散歩コースの充実度は物件選びの軸になります。近くに公園や河川敷、緑道があると日々の散歩が格段に楽になるでしょう。

動物病院へのアクセスも事前に調べておいてください。犬は急な体調不良を起こすことがあり、夜間診療に対応した病院が車で30分圏内にあると安心です。引越し先の候補エリアで「動物病院 夜間」と検索しておくのは賢い準備の一つです。

ペットショップやホームセンターが近くにあるかどうかも日常の利便性に関わります。フードやトイレシーツは消耗品なので、買い足しやすい環境のほうが長い目で見て楽です。Amazonやチャームなどの通販を活用する手もありますが、緊急時に近所で購入できる場所があると安心感が違います。

犬を迎えるまでにかかる初期費用

犬を飼い始めるには、物件の初期費用とは別に犬そのものの費用と飼育グッズ代がかかります。想像以上にまとまった出費になるため、あらかじめ全体像を把握しておきましょう。

項目費用の目安備考
犬の購入費(ペットショップ)15〜40万円犬種・血統により大きく変動
犬の迎え入れ費(保護犬)3〜6万円譲渡費用・医療費として
畜犬登録3,000円市区町村への届出
混合ワクチン接種(初年度)1〜2万円子犬は2〜3回の接種が必要
狂犬病予防注射3,500円前後年1回の義務
マイクロチップ装着0〜数千円ペットショップ購入犬は装着済み
去勢・避妊手術2〜5万円推奨。犬の大きさで費用が変動
飼育グッズ一式3〜6万円後述

飼育グッズの内訳をもう少し詳しく見てみます。

グッズ費用目安選び方のポイント
ケージまたはサークル1〜3万円成犬サイズに合ったものを選ぶ。リッチェルやアイリスオーヤマの製品が定番
トイレトレー+シーツ3,000〜5,000円レギュラー/ワイドは犬のサイズに合わせる
フードボウル・給水器2,000〜4,000円ステンレスか陶器が衛生的。プラスチック製は傷がつきやすく雑菌が繁殖しやすい
首輪・リード3,000〜6,000円体重に合った強度のものを。迷子防止に連絡先を記載した鑑札装着が義務
ベッド3,000〜8,000円洗えるカバー付きが便利。ペティオやドギーマンの製品が手頃
空気清浄機1〜3万円賃貸のにおい対策として推奨。シャープやダイキンのペット対応モデルが人気

犬の購入費を含めると、物件の初期費用とは別に20〜55万円ほどかかります。保護犬を迎える場合は購入費を大幅に抑えられますが、医療ケアや行動面のケアに費用がかかる場合もあるため、予備費として数万円は見込んでおくと安心です。アニコム損保「ペットにかける年間支出調査(2024年)」によると、犬の飼育にかかる年間費用は平均約36万円とされています。

引越しが必要な場合の総コスト

現在ペット不可の物件に住んでいて引越しが必要な場合は、物件の初期費用が上乗せされます。ペット可物件は敷金が通常より1ヶ月分多い傾向があり、家賃自体も一般物件より1〜2割高いケースが見られます。初期費用の相場は家賃の5〜6.5ヶ月分です。

家賃8万円の物件を例にとると、物件の初期費用だけで40〜52万円ほどかかります。内訳は敷金2ヶ月分(16万円)、礼金1ヶ月分(8万円)、仲介手数料1ヶ月分(8万円)、前家賃1ヶ月分(8万円)、保証料0.5ヶ月分(4万円)、火災保険料(1.5〜2万円)の合計です。

費用区分金額の目安内訳
物件の初期費用40〜52万円敷金・礼金・仲介手数料・前家賃・保証料・火災保険
引越し費用3〜10万円距離・荷物量・時期で変動
犬の関連費用20〜55万円購入費・医療費・グッズ一式
総コスト63〜117万円

引越しシーズン(3〜4月)を避けると引越し費用を2〜3割抑えられるケースがあります。犬を迎えるタイミングに余裕がある場合は、閑散期の5〜6月や11〜12月に引越しを済ませてから犬を迎え入れるのも一つの手です。仲介手数料は法律上「家賃の1ヶ月分+税」が上限ですが、手数料を半額やそれ以下に設定している不動産会社もあるため、そうした会社を利用すると初期費用を数万円単位で抑えられます。

犬を迎えたらやるべき届出と手続き

犬を迎え入れたら、法律で義務づけられた手続きがいくつかあります。期限が決まっているものもあるため、漏れなく済ませてください。

犬の所有者は取得日から30日以内に、住んでいる市区町村の窓口で畜犬登録を行う義務があります。登録すると鑑札が交付され、これを犬の首輪に装着しなければなりません。登録手数料は3,000円で、犬の生涯で1回だけの手続きです。

年1回の狂犬病予防注射は法律上の義務です。毎年4〜6月に集団接種が行われますが、動物病院で個別に接種することもできます。注射後に「注射済票」が交付されるので、鑑札とあわせて首輪に装着してください。注射済票の交付手数料は550円です。

2022年6月からはマイクロチップの装着も義務化されました。ペットショップやブリーダーから購入する犬にはすでに装着されているため、飼い主は環境省のデータベース(犬と猫のマイクロチップ情報登録)で所有者情報の変更登録を行います。オンラインでの登録手数料は300円です。保護犬の場合は未装着のこともあるため、動物病院で装着してもらいましょう。費用は3,000〜5,000円程度です。

賃貸物件では管理会社への「ペット飼育届」の提出も忘れてはなりません。ワクチン接種証明書、犬種・大きさの情報、ペットの写真を求められることが一般的です。

室内の飼育環境を整える

犬を迎える前に、室内の安全対策を済ませておきましょう。準備不足のまま犬を迎えると、ケガや事故のリスクが高まるだけでなく、賃貸物件の損傷にもつながります。

フローリングは犬が滑りやすい素材の代表格です。滑りによる関節のケガは小型犬に多く、トイプードルやチワワはパテラ(膝蓋骨脱臼)になりやすい犬種として知られています。パテラの手術費用は片足で150,000〜350,000円にのぼることもあり、予防の重要性がわかるでしょう。サンコーの「おくだけ吸着タイルマット」(45cm角・8枚入り約3,000円)やニトリのジョイントマット(9枚入り約1,000円)を敷いておくだけで、滑り防止と床の傷つき防止を同時に実現できます。タイルカーペットは汚れた部分だけ交換できるため、賃貸での犬の飼育にはうってつけです。

電気コードのかじり防止にはコードカバーが有効です。子犬は何でも噛む時期があるため、特に注意が必要です。コードカバーはホームセンターで1本数百円から購入できます。

観葉植物のなかには犬に有毒なものがあります。ポトス、アイビー、ユリ科の植物は犬が口にすると中毒症状を起こす可能性があるため、犬の届かない場所に移動させるか、撤去してください。

ケージの設置場所は、直射日光が当たらずエアコンの風が直接当たらない場所を選びます。家族の気配が感じられるリビングの壁沿いが理想的なポジションです。窓のそばに置くと夏場は熱中症のリスクが高まり、冬場は冷え込むため避けたほうが無難です。

月々のランニングコストを把握する

犬を飼い始めた後の月々の維持費も事前に把握しておくべきです。犬の大きさによって費用感はかなり変わります。

月額費用の項目小型犬中型犬大型犬
フード代3,000〜5,000円5,000〜8,000円8,000〜15,000円
トイレシーツ1,000〜2,000円2,000〜3,000円3,000〜5,000円
トリミング代5,000〜8,000円(月1回)6,000〜10,000円8,000〜15,000円
医療費(積立)3,000〜5,000円5,000〜8,000円5,000〜10,000円
ペット保険2,000〜4,000円3,000〜5,000円4,000〜7,000円
合計目安14,000〜24,000円21,000〜34,000円28,000〜52,000円

小型犬でも月1.5〜2.5万円、中型犬だと月2〜3.5万円のランニングコストを見込んでおく必要があります。家賃に加えてこの金額が毎月かかることを考慮した上で、物件の家賃帯を決めるのが現実的なプランニングです。トリミング不要の犬種(柴犬、ミニチュアダックスフンドの短毛種など)を選ぶと、月5,000〜8,000円程度の節約になります。

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参考情報

犬の月間飼育費用(犬種別の内訳)はアニコム損保「ペットにかける年間支出調査」および一般社団法人ペットフード協会「2024年全国犬猫飼育実態調査」を参考にしています。ペット可物件の供給率(約15〜20%)は不動産ポータルサイトの検索結果に基づく概算値です。パテラの手術費用は動物病院の公開情報に基づく概算です。マイクロチップのオンライン登録手数料は環境省の公式情報に基づいています。

賃貸で犬を飼い始めるには、物件選び、費用の準備、行政届出、環境整備とやるべきことが積み重なります。犬種によって物件の条件や費用感が大きく変わるため、飼いたい犬種を決めてから物件を探す流れがスムーズです。

初期費用の負担を少しでも軽くするなら、仲介手数料を安く抑えられる不動産会社の利用を検討してみてください。どのポータルサイトで見つけた物件でも対応してもらえるケースが多いため、気に入った物件をお得に契約できる可能性があります。