犬を迎える日が近づくと、楽しみと同じくらい不安も大きくなるものです。何を揃えればいいのか、初日はどう過ごせばいいのか、手続きはいつまでにやるのか。調べれば調べるほど情報が多くて、結局どこから手をつければいいかわからなくなる方は少なくありません。

やるべきことは「迎える前の準備」「初日の過ごし方」「最初の1ヶ月でやること」の3つに分ければ整理できます。グッズの買い出しから行政手続き、獣医への相談タイミングまで、時系列に沿って一つずつ解説していきます。

迎える前に揃えるグッズと費用

犬が家に来た瞬間から必要になるものと、数日以内にあれば助かるものがあります。ペットショップやブリーダーの元にいた環境から突然変わるため、最低限の居場所と食事の準備だけは迎える前日までに終わらせてください。

初日から使うもの

アイテム用途と選び方価格帯
ケージ / サークル犬の居場所。成犬時の体格を見越したサイズを選ぶ。アイリスオーヤマのお掃除楽ちんサークル(約8,000円)やリッチェルのたためるペットサークル(約6,000円)が定番5,000〜15,000円
フードペットショップやブリーダーで食べていたものと同じ銘柄を最低1週間は継続。急に変えると下痢の原因になる月2,000〜5,000円
食器・水皿ステンレス製か陶器製が洗いやすく衛生的。ひっくり返しにくい重みのあるものを選ぶ。100円ショップの小皿は軽すぎて子犬がすぐひっくり返す500〜2,000円
トイレトレー + ペットシーツメッシュカバー付きだとシーツのいたずらを防げる。リッチェルのお掃除簡単ステップトレー(約3,000円)はトレーニング段階でメッシュを使い、覚えたら外せるので長く使える2,000〜5,000円
首輪・リードワクチン完了前でも室内で装着練習を始める。子犬は成長が早いので、調節幅のあるタイプを選ぶ2,000〜5,000円
ベッド / 毛布ケージ内に敷けるサイズ。洗える素材が必須。子犬は噛んでボロボロにするので、最初は高価なベッドより洗濯できるフリースブランケットで十分1,000〜5,000円

あると安心なもの

アイテム用途価格帯
キャリーバッグ / クレート動物病院の通院、災害避難時の移動手段。ハードクレートはケージ代わりにもなる3,000〜10,000円
消臭スプレートイレの粗相の片付け用。酵素系スプレーは臭い成分を分解するので、塩素系より効果が続く800〜1,500円
歯磨きグッズ歯周病予防のデンタルケア。慣らすなら早い時期から始めたほうが楽。指にはめるシートタイプから入ると抵抗が少ない500〜1,500円
おもちゃ噛む欲求の発散とコミュニケーション用。コングのような中にフードを詰められる知育おもちゃは留守番トレーニングにも使える500〜2,000円
爪切り・ブラシ爪切りは小型犬用のギロチンタイプが扱いやすい。ブラシは毛質で選ぶ(短毛種はラバーブラシ、長毛種はスリッカーブラシ)500〜2,000円

グッズ初期費用の目安

必須アイテムだけなら15,000〜35,000円ほど。あると安心なものまで含めると30,000〜50,000円程度です。ただし、フードやペットシーツは消耗品なので、最初に大量購入するよりも犬の好みや使い勝手を確かめてから本格的にストックを増やすほうが無駄になりません。

犬種によって必要なグッズのサイズや量が変わる点にも注意してください。柴犬やコーギーのような中型犬はケージのサイズが大きくなるぶん、小型犬と比べて3,000〜5,000円ほど初期投資が上がります。ダックスフンドやコーギーのように胴長の犬種はトイレトレーもワイドサイズが必要で、シーツの消費量も増えます。

部屋の安全対策

グッズが揃ったら、迎える前に部屋の環境を整えます。犬は好奇心旺盛で、とくに子犬は何でも口に入れます。誤飲事故は動物病院の救急対応で上位に入る原因で、異物除去の手術費用は50,000〜200,000円にのぼることもあります。費用の問題以前に、犬の命に関わる事故を未然に防ぐことが重要です。

電源コードと小物

充電ケーブルは犬が噛みやすく、感電や火傷のリスクがあります。カバーで保護するか、使わないときは引き出しにしまう習慣をつけてください。輪ゴム、クリップ、子どものおもちゃなど、小さな部品が散らばっていないかも確認しましょう。

有毒な植物

観葉植物のうち、ポトス、アロエ、ユリ科の植物は犬にとって有毒です。ユリ科は花粉を舐めただけで中毒を起こすケースがあるため、犬が届かない場所に移すか、飼育期間中は撤去を検討してください。判断がつかない植物がある場合は、獣医師に相談するか、ASPCA(米国動物虐待防止協会)のToxic and Non-Toxic Plant Listで確認できます。

フローリングの滑り止め

見落とされがちですが、犬の関節への影響は大きいです。ツルツルの床は足腰に負担がかかり、とくにトイプードルやチワワなどの小型犬はパテラ(膝蓋骨脱臼)のリスクが高まります。ダックスフンドは椎間板ヘルニアの予防としても床の対策が重要です。コルクマットやタイルカーペットを犬が過ごすエリアに敷くだけで改善できます。詳しくは「犬のフローリング対策。滑り防止マットと爪のケアで安全に暮らす」をご覧ください。

ケージの設置場所

リビングの壁際で、人の動線から少し外れた場所が定番です。家族の気配を感じつつも静かに過ごせる位置を選びましょう。直射日光が当たる窓際やエアコンの風が直撃する位置は避けてください。犬の体温調節は人間より苦手で、とくに短頭種(フレンチブルドッグ、パグなど)は暑さに弱い傾向があります。

初日の過ごし方

迎えた当日は飼い主も犬もテンションが上がりやすい日ですが、犬にとっては見知らぬ環境に移動してきた緊張のときです。「静かに見守る」が初日のテーマだと思ってください。

家に着いたら、まずケージやサークルの中で落ち着かせます。ケージの扉を開けて、犬が自分から出てくるのを待ちましょう。最初の数時間は無理に触ったり抱き上げたりせず、犬のほうから近づいてくるまで距離を取ります。歩き回り始めたら室内を探検させても構いませんが、キッチンや浴室などはベビーゲートで入れないようにしておいてください。

トイレトレーニングは初日から

食後や寝起きなど排泄しやすいタイミングでトイレスペースに連れて行き、うまくできたらしっかり褒めます。失敗しても叱らず、黙って片付けてください。叱ると排泄行為そのものを隠すようになり、トレーニングが長引く原因になります。

トイレの場所を覚えるまでの期間は個体差が大きく、早い犬で1〜2週間、ゆっくりな犬だと1ヶ月以上かかることもあります。トイプードルやミニチュアシュナウザーは比較的覚えが早い傾向がありますが、柴犬は室内トイレを嫌がる個体も少なくありません。柴犬のように外での排泄を好む犬種の場合、ワクチン完了後に散歩のタイミングで排泄を済ませるスタイルに移行することも選択肢に入ります。

初日の夜の過ごし方

夜に鳴くのは珍しくありません。母犬や兄弟犬と離れた不安が原因です。クレートのそばに湯たんぽを置くと、体温に近い温かさで安心するケースがあります。タオルで包んだペットボトルのお湯でも代用できます。

鳴いているときに構いに行くと「鳴けば来てくれる」と学習するため、鳴きやんだタイミングで穏やかに声をかける対応を心がけてください。ただし、鳴き方がいつもと違う、呼吸が荒い、嘔吐や下痢を繰り返すといった場合は体調不良の可能性があります。その場合は様子を見ずに翌朝一番で動物病院を受診してください。

子犬の場合、1日の睡眠時間は18〜20時間です。遊びすぎや構いすぎで睡眠不足になると体調を崩しやすくなるため、起きているときに短い時間だけ触れ合い、疲れた様子を見せたらケージで休ませましょう。

お迎え後1ヶ月のやることタイムライン

初日を乗り越えたら、1ヶ月かけて生活の土台を整えていきます。手続き・医療・しつけをまとめて、週ごとのタイムラインにしました。

時期やること詳細
1週目かかりつけ動物病院の初回受診全身チェック、ワクチン接種状況の確認、ノミ・ダニ予防の相談。費用は検査+ワクチンで10,000〜20,000円程度。夜間救急の対応可否も確認しておく
1週目マイクロチップの飼い主情報変更2022年6月以降に販売された犬は装着済み。環境省「犬と猫のマイクロチップ情報登録」サイトでオンライン手続き。登録手数料300円(オンライン)
2週目畜犬登録 + 狂犬病予防注射生後91日以上の犬は30日以内に市区町村で登録が義務。登録手数料3,000円 + 注射費用2,750〜3,500円 + 注射済票交付550円で、合計約6,500〜7,000円。未登録・未接種は20万円以下の罰金の対象
2〜4週目混合ワクチン2回目・3回目子犬は生後8週・12週・16週の計3回が標準。3〜4週間隔で接種する。5種混合で5,000〜7,000円/回、8種混合で7,000〜10,000円/回
2〜4週目フィラリア・ノミダニ予防の開始投薬時期は地域と季節による。フィラリア予防薬は月1,000〜2,000円、ノミダニ予防薬は月1,500〜2,000円。オールインワンタイプなら月2,300円前後にまとめられる
3〜4週目社会化トレーニング生後3ヶ月頃までが社会化期。家の中の生活音(掃除機、ドライヤー、チャイム)に慣らす。ワクチン完了前でも抱っこして外の音や景色に触れさせることは有効
4週目以降散歩デビューワクチンプログラムが完了してから2週間後を目安に。いきなり長距離は歩かず、最初は家の周りを5〜10分程度から

このタイムラインはあくまで目安です。ワクチンの接種間隔や散歩の開始時期はかかりつけの獣医師と相談して決めてください。

初年度にかかる医療費の内訳

グッズ費用とは別に、初年度は医療関連の出費がまとまって発生します。「思ったよりお金がかかった」という声が多い部分なので、事前に把握しておくと安心です。

項目費用目安備考
初回健康診断5,000〜10,000円血液検査を含む場合は10,000〜20,000円
混合ワクチン(3回)15,000〜30,000円5種で15,000〜21,000円、8種で21,000〜30,000円
狂犬病予防注射 + 登録約6,500〜7,000円初年度は登録料3,000円が加算
フィラリア予防(8ヶ月分)8,000〜16,000円体重と薬のタイプで変動
ノミ・ダニ予防(通年)12,000〜24,000円月1,000〜2,000円
避妊・去勢手術20,000〜50,000円希望する場合。メスの避妊のほうが高い傾向
合計(避妊去勢なし)約47,000〜87,000円
合計(避妊去勢あり)約67,000〜137,000円

初年度の医療費だけで5〜14万円かかる計算です。グッズ代の3〜5万円と合わせると、犬の生体価格を除いても初期費用の総額は10〜20万円程度を見込んでおく必要があります。犬を迎える費用の全体像は「犬を飼うのにかかる費用。月額・年間・生涯コストまとめ」で詳しく解説しています。

獣医に相談すべきタイミング

子犬は環境変化のストレスで体調を崩しやすく、迎えてから1〜2週間は特に注意が必要です。「様子を見よう」と迷ったときの判断基準を整理しておきます。

すぐに受診が必要なサイン(当日中に動物病院へ)は、ぐったりして動かない、1日に3回以上の嘔吐や下痢を繰り返す、血便や血尿が出た、呼吸が荒い・口を開けて苦しそうにしている、痙攣を起こした、といった症状です。

翌日の受診を検討する症状としては、食欲がない状態が半日以上続く、水を飲む量が急に増えた・減った、咳やくしゃみが頻繁に出る、目やにや鼻水が増えた、足を引きずる・かばって歩く、といったものがあります。

犬種によって注意すべきポイントも異なります。チワワやポメラニアンなどの超小型犬は低血糖を起こしやすく、食事を抜いただけで危険な状態になることがあります。フレンチブルドッグやパグなどの短頭種は、気温25度を超えると熱中症のリスクが高まるため、夏場の室温管理が欠かせません。ゴールデンレトリバーやラブラドールなどの大型犬は、成長期に関節や骨の異常が出やすいので、子犬の段階から適正体重の管理が重要になります。

いずれの症状も、素人判断で市販薬を与えたり民間療法を試したりせず、獣医師の診察を受けてください。夜間に急変した場合に備えて、24時間対応の救急動物病院を事前に調べておくと慌てずに済みます。

賃貸物件で犬を飼い始める場合の追加チェック

ペット可の契約であっても、確認事項は意外と多いです。飼い始めてから「知らなかった」では済まない項目があるので、迎える前に整理しておきましょう。

管理会社や大家への届出は、契約書に明記がなくても行っておくのがトラブル予防になります。犬種・体重・頭数の制限が設けられているケースがほとんどで、「小型犬1頭まで」「体重10kg以下」といった条件を超えると契約違反になる可能性があります。

敷金の追加や退去時の原状回復費用も事前に確認してください。ペット飼育の場合、敷金が1ヶ月分上乗せされる契約は珍しくなく、退去時のクリーニング費用も通常より高くなるのが一般的です。

近隣への挨拶も忘れずに。犬の鳴き声や足音は集合住宅ではトラブルになりやすいため、飼い始めのタイミングで両隣と上下階の住人に一言伝えるだけで印象が変わります。「ペットを飼い始めたら近隣挨拶を。タイミング・伝え方・手土産の選び方」も参考にしてください。

参考情報

畜犬登録と狂犬病予防注射の義務は狂犬病予防法(昭和25年法律第247号)第4条・第5条に基づきます。マイクロチップの装着義務化は動物の愛護及び管理に関する法律(動物愛護管理法)の2019年改正、2022年6月施行によるものです。登録手数料(オンライン300円)は環境省「犬と猫のマイクロチップ情報登録」サイトの公開情報に基づきます(2026年4月確認)。畜犬登録費用(3,000円)と注射済票交付手数料(550円)は多くの自治体で共通ですが、注射料金は動物病院により異なります。ワクチン費用・フィラリア予防費用は複数の動物病院の公開料金表を参考にした概算です。グッズ価格はメーカー公式サイトおよび主要ECサイトの販売価格を参考にしています(2026年4月時点)。

まとめ

犬を迎える準備は、グッズの購入だけでなく、部屋の安全対策や行政手続き、かかりつけ医の選定まで含めると想像以上にやることが多いものです。前日までに環境を整え、初日は犬のペースに合わせて静かに過ごし、1ヶ月かけてワクチン・登録・社会化トレーニングを進めていく。この流れを頭に入れておけば、慌てずに新生活をスタートできます。

初期費用はグッズと医療費で10〜20万円。金額だけを見ると大きく感じますが、最初に必要な投資をきちんと行うことが、その後10〜15年の暮らしを快適にする土台になります。

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