リモートワークの普及によって、都市部を離れて犬と一緒に田舎暮らしを始める人が増えています。フルリモートや週1〜2回出社のハイブリッド勤務が定着し、住む場所の自由度が高まったことが背景にあります。広い庭付きの一戸建てで犬を自由に遊ばせたい、自然のなかで毎日散歩したいという憧れは、地方移住で実現できる可能性があります。

ただし、田舎暮らしには都市部にはなかった課題や注意点もあります。犬と田舎暮らしを始めるためのメリット・デメリット、移住先の選び方、お試し滞在の方法までをまとめました。

犬と田舎暮らしのメリット

都市部から地方に移住した犬飼いが実感するメリットは、散歩環境の変化が最も大きいでしょう。都会では歩道の狭い道を車に注意しながら歩いていたのが、田舎では田畑や山道をリードをゆったり持って散歩できます。ほかの歩行者とすれ違うことも少ないため、犬が落ち着いて歩けるようになったという声は移住者からよく聞きます。

住居費が安く、広い家に住めるのも大きな利点です。東京で月10万円の1LDKに住んでいた方が、地方では同じ家賃で庭付きの3LDK一戸建てを借りられることもあります。庭があれば犬を自由に遊ばせることができ、室内だけでは解消しきれない運動欲求に応えられます。

比較項目都市部(東京23区)地方(人口10万人以下)
家賃(3LDK)15〜20万円5〜8万円
庭付き物件ほぼない選択肢あり
散歩環境都市公園中心山・川・田畑
騒音問題気を使う気にしなくてよいケースが多い
ドッグラン施設を利用(月会費あり)自宅の庭で代替可能

マンションで犬の鳴き声に気を遣っていた方にとって、隣家との距離がある一戸建てに住む安心感は格別です。ビーグルやシェルティのように声が大きい犬種を飼っている場合、この変化だけで移住してよかったと感じる方もいます。

犬種別に考える田舎暮らしの相性

犬種によって田舎暮らしの相性には差があります。移住前に愛犬の特性を踏まえた検討が必要です。

犬種タイプ田舎暮らしとの相性注意点
大型犬(ラブラドール、ゴールデン等)非常に良い庭の柵の高さ・強度を確保する
牧羊犬系(ボーダーコリー、コーギー等)非常に良い広い運動スペースで本領発揮。家畜への追い行動に注意
和犬(柴犬、秋田犬等)良い野生動物への反応が強い。リード管理を徹底
短頭種(フレンチブルドッグ、パグ等)環境による標高の高い涼しいエリアなら快適。内陸の猛暑エリアは避ける
超小型犬(チワワ、ヨーキー等)やや注意猛禽類や野生動物に狙われるリスク。庭での放し飼いは避ける
テリア系(ジャック・ラッセル等)良いが管理必要小動物を追いかける本能が強い。脱走対策が重要

田舎暮らしの注意点とデメリット

一方で、都市部にはなかった課題も出てきます。事前に理解しておくと、ギャップに戸惑うことが減ります。

動物病院が少ないのは最も深刻な問題です。都市部なら徒歩圏に複数の動物病院がありますが、地方では車で30分以上かかるケースも珍しくありません。夜間救急に対応する病院はさらに限られます。持病のある犬や高齢犬の場合、かかりつけ医へのアクセスは移住の可否を左右する条件になります。移住先で通える動物病院を事前にリストアップし、可能であれば一度受診しておくと安心です。

注意点内容対策
動物病院が少ない最寄りの病院まで車で30分以上のエリアも移住前に通える範囲の病院を複数調べる
野生動物との遭遇イノシシ、クマ、マダニ、ヒルフィラリア・ダニ予防を通年で徹底
ペットショップが少ないフードや用品の入手が限られるAmazon定期便やヨドバシ.comを活用
車が必須公共交通が少ない犬を乗せやすいワゴン車を検討
地域のルール放し飼い禁止条例、犬の登録転入先の自治体に確認

野生動物との遭遇は、都市部では考えなかった問題です。山間部や河川敷ではマダニやヒルが多く、散歩から帰宅した際のチェックが欠かせません。マダニの予防薬としてはネクスガード(月1回の経口投与、1錠1,500〜2,000円前後)やフロントラインプラス(月1回のスポット剤、1本1,200〜1,500円前後)が定番です。田舎暮らしではフィラリアとダニの予防を通年で行うことを獣医師から勧められるケースが多くなります。

クマが出没するエリアでは熊鈴を携帯して散歩するのが基本です。モンベルの「トレッキングベル サイレント」(2,200円・税込)は消音機能付きで、店舗や車に入る際に音を止められるため犬の散歩に適しています。

ペットフードや用品の入手は、田舎ではホームセンターか通販頼みになります。Amazon定期便でロイヤルカナンやヒルズのフードを月1回配送設定しておくと、買い忘れを防げます。

犬と暮らす移住先の選び方

移住先を選ぶ際には、犬との暮らしに関わるポイントを優先順位をつけて検討するのが現実的です。

動物病院へのアクセスは最優先で確認しましょう。車で20分以内に通える範囲に動物病院があるかどうかを、Googleマップで調べておきます。持病のある犬の場合、対応できる専門医が県内にいるかも重要です。

散歩コースの安全性も見落とせません。交通量の多い国道沿いしか歩ける道がないエリアは、犬の散歩には向きません。農道や林道、河川敷など、車を気にせず歩けるコースが近くにあるかを現地で確認しましょう。

気候も犬種によって検討が必要です。暑さに弱いフレンチブルドッグやパグは、夏の気温が高い内陸部より高原や海沿いのエリアが適しています。標高1,000m以上のエリアでは真夏でも朝晩の気温が15〜20度に下がるため、短頭種でも快適に散歩できます。寒さに弱いチワワやミニチュアピンシャーは、積雪の多い地域では冬の散歩に防寒着が必須になります。

人気のある移住先エリア

犬と暮らす地方移住先として選ばれているエリアをいくつか紹介します。

長野県は軽井沢をはじめ、犬に優しい観光地として定評があります。標高約950mに位置する軽井沢は8月の平均最高気温が25度台と冷涼で、ドッグラン併設のカフェやペット同伴可能な宿泊施設も充実しています。東京から新幹線で約1時間というアクセスの良さもあり、完全移住ではなく二拠点生活の拠点としても選ばれています。安曇野や松本エリアは北アルプスの山々に囲まれた環境で、家賃は東京の3分の1程度です。長野県は移住支援が手厚い自治体が多く、ペット可の移住体験住宅を用意している地域もあります。

千葉県の房総エリアは、海辺の散歩を楽しみたい犬飼いに人気です。温暖な気候で冬場も散歩しやすく、東京からアクアラインを使えば車で1時間半程度。館山や鴨川には犬連れで入れるビーチもあり、毎日の散歩が海辺の体験になります。ゴールデンレトリーバーやラブラドールなど水遊びが好きな犬種には理想的な環境でしょう。

静岡県の伊豆半島は犬連れの観光客が多いため、ペットに理解のある地域です。伊豆高原エリアにはペット可のレストランやカフェが30軒以上集まっており、犬と一緒に外食を楽しめる環境が整っています。温泉付きのペット可宿泊施設も多く、犬との温泉旅行を楽しめるのは伊豆ならではの特徴です。

移住先東京からのアクセス家賃(3LDK目安)動物病院犬の散歩環境
長野・軽井沢新幹線1時間6〜10万円複数あり高原の林道・ドッグラン充実
千葉・房総車で1.5時間4〜7万円やや少ない海辺の散歩が日常
静岡・伊豆車で2時間5〜8万円観光地周辺に集中海・山の両方が近い
山梨・八ヶ岳車で2時間4〜7万円少ない高原の自然のなかを散歩
栃木・那須車で2.5時間3〜6万円やや少ないドッグラン・ペット施設が多い

賃貸と購入、どちらが良いか

地方移住では、賃貸よりも一戸建ての購入を検討する方も多いですが、最初は賃貸から始めることをおすすめします。

田舎暮らしに馴染めるかどうかは、実際に住んでみないとわかりません。気候や地域コミュニティとの相性、犬の散歩コースの使い勝手なども、住んでみて初めて気づくことが多いです。最低でも1年は賃貸で暮らしてみて、その土地での犬との暮らしが合っているかを確認してから購入を検討するのが堅実です。

地方の賃貸物件は都市部に比べてペット可の条件がゆるいことが多く、大型犬でも飼育可能な物件が見つかりやすい傾向があります。一戸建ての賃貸も選択肢に入り、庭付きの物件が月5万円以下で借りられるケースも珍しくありません。

犬を飼う前提で購入する場合は、庭の柵の設置費用も見込んでおきましょう。ドッグラン代わりに使える庭には、犬が飛び越えられない高さの柵(小型犬で90cm以上、中型犬で120cm以上、大型犬で150cm以上)が必要です。既製品のアルミフェンスを業者に設置してもらうと、10m分で15〜30万円が目安です。

地域コミュニティとの付き合い方

田舎暮らしでは、地域のコミュニティとの関わりが都市部に比べて濃くなります。自治会や町内会への参加が事実上の義務になっている地域もあり、回覧板の受け渡しや地域の清掃活動に参加するケースも珍しくありません。

犬を飼っている場合、散歩中に地域の方と顔を合わせる機会が自然と増えます。犬が話題のとっかかりになり、「散歩コースはどこを通ってますか」「うちにも犬がいるんです」といった会話から関係が広がっていくケースは、地方移住した犬飼いからよく聞く話です。

一方、地域によっては犬の放し飼いが暗黙的に許容されている慣習が残っている場合もありますが、条例上は禁止されている自治体がほとんどです。トラブルを防ぐためにも、リードの着用と排泄物の処理は田舎でも徹底しましょう。近隣に畑がある場合、犬が侵入して農作物を荒らすと大きな問題に発展しかねません。

田舎暮らしで犬にかかる費用の変化

地方移住で住居費が大幅に下がる一方、犬の飼育コストがどう変わるかも把握しておきたいところです。

項目都市部の目安地方の目安備考
フード・おやつ月5,000〜10,000円変わらない通販なら価格差なし
動物病院(通院費+交通費)月2,000〜5,000円月2,000〜8,000円ガソリン代が加算
トリミング1回5,000〜8,000円1回4,000〜6,000円個人店が多くやや安い
ドッグラン月会費1,000〜3,000円0円庭や河川敷で代替
ダニ・フィラリア予防月1,500〜2,500円月1,500〜2,500円通年投与が推奨される

フードの価格は都市部と変わりませんが、動物病院の選択肢が少ない分、通院の交通費がかさむケースがあります。車のガソリン代を月の犬関連経費として見込んでおくと、予算のズレが起きにくくなります。

移住前の「お試し滞在」がおすすめ

いきなり移住するのではなく、短期間の「お試し滞在」を挟むと移住後のギャップを減らせます。ペット同伴可能なコテージやゲストハウスに1〜2週間滞在し、実際の散歩コースを歩いてみたり、最寄りの動物病院を訪ねてみたりすることで、その土地での犬との暮らしが具体的にイメージできます。

自治体によっては移住体験住宅を用意しているケースもあり、格安で短期滞在できる制度を活用する手もあります。長野県や高知県室戸市などはペット可の体験住宅を用意しており、犬連れでの移住体験が可能です。真夏や真冬など季節の厳しい時期に滞在してみると、年間を通じて暮らせるかどうかの判断材料が増えます。

参考情報

各エリアの家賃相場はSUUMO・HOME’S等の不動産ポータルサイトの掲載データ(2026年4月確認)に基づく概算値です。動物病院の分布状況は各県の獣医師会サイトおよびGoogleマップの検索結果を参考にしています。犬の健康管理(予防薬の選択・投与頻度等)については、かかりつけの動物病院にご相談ください。

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